「鉄座について大森御役所への口上」の版間の差分

提供:桜江古文書を現代に活かす会
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[[Category:中村家文書|]]
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目録番号:ま136
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[[Category:中村家文書|あ]]
 
[[Category:松江藩関係|あ]]
 
目録番号:ま1-2
 
  
 
担当:島根大学法文学部社会文化学科歴史と考古コース古文書ゼミ
 
担当:島根大学法文学部社会文化学科歴史と考古コース古文書ゼミ
  
担当:古文書に親しむ会 in 桜江
 
  
担当:古文書に親しむ会 in 松江
+
== 文書画像と釈文,書き下し文 ==
  
 +
=== 1枚目(全6枚の内) ===
  
== 文書画像と釈文 ==
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+
  乍憚口上
=== 1枚目(全2枚の内) ===
 
 
 
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     借用申銀子事
 
  丁銀弐拾五貫目也  但 申三月元日十二月切利ノ分壱割半ニシテ
 
右者二之丸御蔵入米我等共江被 仰付候處
 
才覚不相成貴殿へ御頼申入候得者前書之銀御貸
 
被下、慥借用仕、米上納仕候所、実正也、然上者三月より
 
十二月迄壱割半之加利にて元利無不足返済可仕候
 
万一本人不埒仕候ハバ請人より日限ニ急度埒明可申候
 
返弁方之儀被入御念候ニ付、此月当神門郡ニ而弐拾
 
四ケ村より別紙證文相渡候通少無相違返弁可仕候
 
ケ様相定候上者仮令如何様之不慮新規
 
御国法出来候共、毛頭相違申間敷候条後日
 
請人并御役所御奥書取之相渡申所
 
            仍如件
 
             雲州神門郡大津借主
 
                  山田 又左衛門  印
 
  宝暦十四申十一月   同所  同断
 
                  森廣 幾太    印 
 
             同郡  知井宮
 
                  山本 仁兵衛   印
 
             同郡  杵築請人
 
                  藤間 久左衛門  印
 
             松江請人
 
                  森脇 甚右衛門  印
 
 
 
=== 2枚目(全2枚の内) ===
 
 
 
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      石州銀山御領
 
          西田屋喜六 殿
 
          角屋庄十郎 殿
 
前書之通承届御返弁之儀相違無之様
 
急度可申付候御奥書如件
 
             雲州勝手方役
 
                 和田 理八
 
                 岡本 彦助
 
                 田中 幸平
 
                 後藤 久兵衛
 
                 荒井 助市
 
             同奉行
 
                磯崎 丈太夫
 
                湯川 冶兵衛
 
                山本 覚兵衛
 
            西田屋 喜六 殿
 
            角屋  庄十郎殿
 
 
 
 
 
== 書き下し文 ==
 
 
 
借用申す銀子のこと
 
 
 丁銀二拾五貫目なり   但し申三月元日十二月切
 
                 利ノ分一割半ニシテ
 
 
   
 
   
  右は二の丸お蔵入り米我ら共へ、仰せつけられ候ところ
+
  去ル子年被為鉄座御取立成私共義仕
  才覚相ならず。貴殿へ御頼み申し入れ候へば、前書の銀御貸し
+
  来り候商売之筋御糺之上問屋并仲買
  下され、たしかに借用つかまつり、米上納仕り候所、実正なり、しかる上は三月より
+
  共株被仰付永久安堵之義難有仕合
  十二月まで一割半の加利にて元利不足なく返済仕るべく候
+
  奉存候則御仕法之趣ヲ以代呂物往来差
  万一本人不埒仕り候はば、請け人より日限にきっとらち明け申すべく候
+
  滞之儀ハ無御座候得共鉄荷之儀御座ヘ
  返弁方の儀ご念を入れられ候につき、この月当神門郡にて二十
+
  一手ニ御買上ヶ被置成直段等も差定リ
四ヵ村より別紙証文相渡し候とおり少しも相違なく返弁仕るべく候
 
かようあい定め候上はたとえいかようの不慮新規
 
御国法しゅったい候とも、もうとう相違申すまじく候条後日
 
請け人ならびにお役所御奥書きこれを取り相渡し申すところ
 
よって件のごとし
 
 
   
 
   
前書きのとおり承り届けお返弁の儀 相違これ無きよう
 
きっと申しつくべく候御奥書き件のごとし
 
  
 +
憚りながら口上
 
   
 
   
== 現代語訳 ==
+
去る子年、鉄座御取立て成させられ,私共義仕り
 +
来り候商売の筋御糺しの上、問屋并びに仲買
 +
共株に仰せ付けられ、永久安堵の義、有難き仕合せに
 +
存じ奉り候則ち御仕法の趣を以って、代ろ物の往来、差し
 +
滞りの儀は御座無く候えども、鉄荷の儀御座へ
 +
一手に御買上げ成し置かれ直段等も差し定まり
  
松江城ニの丸のお蔵入り米を私どもに仰せつけられたけれども
+
=== 2枚目(全6枚の内) ===
算段がつきませんので、あなた様へ御頼みいたしましたところ、前書きの銀子をお貸し
 
くださることにことになり、たしかに受け取りました。
 
お借りしたうえは、3月から12月まで1割半の利息で元利ともに不足なく返済いたします。
 
万一私ども借主がお返しできなかった時には、請け人が日限迄にきっとお返し致します。
 
間違えなくお返しいたします。返済について御念を入れられたので、宝暦14年11月、神門郡にて
 
24ヵ村より別紙証文をお渡しした通り、少しも相違無くお返し致します。
 
このように決めたうえは、いかなる別の新しい法律ができたとしても、間違えなくお返し致します。以上の通り、後日、
 
請け人及びお役所の奥書きを取りお渡ししました。
 
宝暦14年申4月(明和元年・1764年)<ref>脚註のダミーです。</ref>
 
  
ニの丸お蔵入り米を才覚できず、丁銀25貫目の借用申し込みをする。
+
[[ファイル:ま-136(2).JPG|600px]]
これによって米を上納した
+
在之候様ニてハ代呂物之取遣不□之筋
3月~12月まで一割半の利で返済を約束する
+
相見ヘ申候惣体諸代呂物売買之様子
 +
ヲ以私共兼々相考候所、右之通リ奉存候
 +
御仕法之儀ヲ彼是申上候段奉恐入候得共
 +
取扱相馴候儀ニ付何卒此上共御陰ヲ以
 +
取続□手広ニ商売も仕度奉願候儀ニ
 +
御座候右ニ付奉存候得者御座方御仕法
 +
之儀ハ是迄之通り万事御取扱為
 +
成鉄類売買方之儀ハ山元仕切ヲ初メ諸向
 +
売捌方共問屋中買共相対ヲ以売買仕候
 +
様被為仰付候ハ﹅鉄類商売かた手広
 +
(有脱カ)
 +
相成候様尤諸向之差支も無之筋与難
 +
奉存候依之左ニ奉申上候
 +
一、御座ゟ問屋仲買御取扱万端是迄之
  
■借主 雲州神門郡大津の山田又右衛門、森廣幾太
+
これ在り候様にては代ろ物の取り遣り□ざるの筋
 +
相見え申し候、惣体、諸代呂物の売買の様子
 +
を以て私共兼々相考え候所、右の通り存じ奉り候、
 +
御仕法の儀を彼れ是れ申し上げ候段恐れ入り奉り候得共、
 +
取り扱い相馴れ候儀に付き、何とぞ此の上共御蔭を以て
 +
取り続き□手広に商売も仕りたく願い奉り候儀に
 +
御座候、右に付き存じ奉り候えば、御座方御仕法
 +
の儀はこれ迄の通り万事御取り扱い成させられ、
 +
鉄類売買方の儀は山元仕切りを初め、諸向き
 +
売り捌き方共問屋・中買共相対を以って売買仕り候
 +
様仰せ付けさせられ候わば、鉄類商売かた手広く
 +
相成り候様、尤も諸向きの差し支えもこれ無き筋と有り難く
 +
存じ奉り候、これに依り左に奉り上げ候
 +
 一、御座より問屋仲買御取り扱い、万端是までの
  
■保証人 雲州郡知伊宮の山本仁兵衛、杵築の藤間久左衛門、松江の森脇甚右衛門
+
=== 3枚目(全6枚の内) ===
  
■貸主 西田屋幾六、角屋庄十郎
+
[[ファイル:ま-136(3).JPG|600px]]
 +
通り被為成下度事
 +
一、鉄類売買取引方之儀ハ問や仲買双方
 +
  以相対売買被為仰付候様仕度尤御座ゟ
 +
  口銭銀ハ受取不申心得ニ御座候
 +
    (鉄)
 +
一、■釼銑三品共束運上ニ御定め被為成下度
 +
  事此束掛り上納之儀ハ是迄平キン均直段 
 +
   (衍字)
 +
  直段ヲ以鉄釼凡四拾目つゝ銑ハ拾三匁
 +
  つゝ鉄釼束ニ四匁つゝ銑三拾貫目ニ付
 +
  三匁九分つゝ時々高下ニ不抱上納可仕候
 +
  尤壱ヶ年凡鉄釼登り高ハ拾弐万束之
 +
  積りヲ以壱ヶ月壱万束之引当として
 +
  月々銀四拾貫目つゝ右運上銀問屋中買
 +
  ゟ半分宛割合出之上納仕度候但シ毎年
 +
  極月ニ相成候て月々四拾貫目つゝ差上置候
 +
  運上銀過不足之儀ハ年分廻着高ヲ以
 +
   
 +
一、御座より問屋仲買御取り扱い、万端是までの
 +
    通り成し下させられたき事
 +
一、鉄類売買取引方の儀は、問屋仲買双方
 +
  相対をもって売買仰せ付けさせられ候よう仕りたく、尤も御座より
 +
  口銭銀は受け取り申さざる心得に御座候
 +
一、鉄釼銑三品とも、束運上に御定め成し下させられたき
 +
  事、此の束掛かり上納の儀は、是まで平均直段
 +
    を以て鉄釼凡そ四拾目ずつ、銑は拾三匁
 +
    ずつ、鉄・釼束に四匁ずつ、銑三拾貫目に付き
 +
    三匁九分ずつ、時々高下に拘わらず上納仕るべく候
 +
    尤も、壱ヶ年凡そ鉄・釼登り高は拾二万束の
 +
    積もりを以て壱ヶ月壱万束の引き当てとして
 +
    月々銀四拾貫ずつつ、右運上銀問屋中買
 +
    より半分ずつ割合之をいだし上納仕りたく候、但し、毎年
 +
    極月に相成り候て月々四十貫目つつ差し上げ置候
 +
    運上銀過不足の儀は年分廻着高を以て
  
■松江藩勝手方役人、奉行が連著保証の奥書きをしている
+
=== 4枚目(全6枚の内) ===
  
    勝手方役人 和田理八、岡本彦助、田中幸平、後藤九兵衛、荒井助市
+
[[ファイル:ま-136(4).JPG|600px]]
 +
 御勘定御調被下度候尤銑之義ハ別段
 +
 ニ御勘定仕相納メ可申事
 +
一、問屋共ゟ廻着御座へ相届ケ候ハヽ是迄之
 +
 通り厳重ニ廻着束数早速御見分
 +
 被為成下御座御長面御扣置被為成下候事
 +
一、御座有御荷物之儀印束数御長面御見せ
 +
 可被下候左候ハヽ相捌方之儀ハ被為仰付候
 +
 ハヽ弐万束ハ最初両月売捌申則
 +
 代銀三拾日限り宛上納可仕候相残り
 +
 荷物之儀ハ壱ケ月ニ弐千五百束つヽ売退キ
 +
 可申候此代銀十五日限り相納メ可申候尤
 +
 問屋方へ廻着之余度も無暫時ハ
 +
 随分出精致別段ニ束数多ク引請
 +
 取捌可仕候事
 +
 右之通り御聞届ケ被為成下候ハヽ一統
 +
 難有奉存候以上
  
    勝手方奉行 磯崎丈太夫、湯川治兵衛、山本覚兵衛
+
   御勘定御調え下されたく候、尤も銑の儀は別段
 +
   に御勘定つかまつり相納め申すべき事
 +
一、問屋共より廻着、御座へ相届けそうらわば、これまでの
 +
 通り厳重に廻着束数早速御見分
 +
 成し下させられ、御座御長面御扣え置き成し下させられそうろう事
 +
一、御座有り御荷物の儀、印、束数御長面御見せ
 +
 下さるべくそうろう。左そうらわば、相捌き方の儀は仰せ付けさせられそうら
 +
 わば、弐万束は最初両月売り捌き申し、則ち
 +
 代銀三拾日限りづつ、上納仕るべくそうろう。相残り
 +
 荷物の儀は、壱ケ月に、弐千五百束づつ売り退き
 +
 申すべくそうろう。この代銀十五日限り相納め申すべくそうろう。もっとも
 +
 問屋方へ廻着の余度も暫くなき時は
 +
 随分出精致し、別段に束数多く引き請け
 +
 取り捌き仕るべくそうろう事
 +
 右の通り御聞き届け成し下させられそうらはば、一統
 +
 有り難く存じ奉りそうろう、以上
  
 +
=== 5枚目(全6枚の内) ===
  
== 脚註 ==
+
[[ファイル:ま-136(5).JPG|600px]]
 +
  天明四辰十一月
 +
    右之趣仲買中ゟ願度之由ニ而
 +
    問屋方ヘ相談有之則問屋中ゟ
 +
    返答之事
 +
    一昨廿日御申聞猶又御願書之写シ
 +
    御見せ則写シ取此方仲間一統江一覧
 +
    為致候然ル所問屋共ハかね而御安内
 +
    之通り律儀成ル下もかた荷主
 +
    掛合のミニて渡世致候問屋共ニ候得ハ
 +
    御書面之趣かつてん行不申候ゆへ
 +
    差当り否哉之御返答難及よし問屋
 +
    中間一統申之候
 +
      十一月廿一日夜
  
<references />
+
      天明四辰十一月
 +
    右の趣仲買中より願いたきの由にて
 +
    問屋方へ相談これあり。則ち、問屋中より
 +
    返答の事。
 +
    一つ、昨廿日お申し聞け、なお又、御願書の写し
 +
    お見せ、則ち写し取り、此方仲間一統へ一覧
 +
    致させ候。然る所、問屋共はかねてご安内
 +
    の通り、律儀成る下もかた荷主
 +
    掛け合いのみにて渡世致し候問屋共に候えば、
 +
    御書面の趣かつてん行き申さず候ゆへ、
 +
    差し当たり否哉の御返答及び難きよし、問屋
 +
    中間一統これを申し候。
 +
      十一月廿一日夜
  
 +
=== 6枚目(全6枚の内) ===
  
== コメント ==
+
[[ファイル:ま-136(6).JPG|600px]]
 +
 天明四年辰十二月
 +
此願書写辰十二月三日大坂出立
 +
        平十事
 +
同十一日夜瀬尻鑪金十郎
 +
取帰リ申候并大坂屋善助殿ゟ大森
 +
御役所へ参候御用状御添触取帰リ
 +
十二日大森藤井様御家来帰リ便リ大森
 +
右御用状御添触遣申候
  
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+
   天明四年辰十二月
{{:ノート:{{PAGENAME}}}}
+
此の願書写し辰十二月三日大坂出立、
 +
        平十事
 +
同十一日夜瀬尻鑪金十郎
 +
取り帰り申し候、并びに大坂屋善助殿より大森
 +
御役所へ参り候御用状御添触取り帰り、
 +
十二日大森藤井様御家来帰り便り大森
 +
右御用状御添触遣わし申し候
  
<div class="boilerplate metadata plainlinks">
+
== 現代語訳 ==
{| cellspacing="2" cellpadding="3" style="text-align:center;width:80%;border:solid #999 1px;background:#F8F8F8;margin:0.5em auto;clear:both"
+
  憚りながら口上
|この項目「'''{{PAGENAME}}'''」は、まだ書きかけの項目です。
+
  去る子年に幕府が鉄座をお設けなさった時に、私共の
|}
+
  商売の筋をお調べなさって、問屋と仲買に
</div>
+
  株を末長くお認めになったことは
[[Category:中村家文書|あ]]
+
  ありがたく思います。
[[Category:松江藩関係|あ]]
 
目録番号:ま1-2
 
 
 
担当:島根大学法文学部社会文化学科歴史と考古コース古文書ゼミ
 
 
 
担当:古文書に親しむ会 in 桜江
 
 
 
担当:古文書に親しむ会 in 松江
 
 
 
 
 
== 文書画像と釈文 ==
 
 
 
=== 1枚目(全2枚の内) ===
 
 
 
[[ファイル:2-1-1.JPG|600px]]
 
 
 
     借用申銀子事
 
  丁銀弐拾五貫目也  但 申三月元日十二月切利ノ分壱割半ニシテ
 
右者二之丸御蔵入米我等共江被 仰付候處
 
才覚不相成貴殿へ御頼申入候得者前書之銀御貸
 
被下、慥借用仕、米上納仕候所、実正也、然上者三月より
 
十二月迄壱割半之加利にて元利無不足返済可仕候
 
万一本人不埒仕候ハバ請人より日限ニ急度埒明可申候
 
返弁方之儀被入御念候ニ付、此月当神門郡ニ而弐拾
 
四ケ村より別紙證文相渡候通少無相違返弁可仕候
 
ケ様相定候上者仮令如何様之不慮新規
 
御国法出来候共、毛頭相違申間敷候条後日
 
請人并御役所御奥書取之相渡申所
 
            仍如件
 
             雲州神門郡大津借主
 
                  山田 又左衛門  印
 
  宝暦十四申十一月   同所  同断
 
                  森廣 幾太    印 
 
             同郡  知井宮
 
                  山本 仁兵衛   印
 
             同郡  杵築請人
 
                  藤間 久左衛門  印
 
             松江請人
 
                  森脇 甚右衛門  印
 
 
 
=== 2枚目(全2枚の内) ===
 
 
 
[[ファイル:2-1-2.JPG|600px]]
 
 
 
      石州銀山御領
 
          西田屋喜六 殿
 
          角屋庄十郎 殿
 
前書之通承届御返弁之儀相違無之様
 
急度可申付候御奥書如件
 
             雲州勝手方役
 
                 和田 理八
 
                 岡本 彦助
 
                 田中 幸平
 
                 後藤 久兵衛
 
                 荒井 助市
 
             同奉行
 
                磯崎 丈太夫
 
                湯川 冶兵衛
 
                山本 覚兵衛
 
            西田屋 喜六 殿
 
              角屋  庄十郎殿
 
 
 
 
 
== 書き下し文 ==
 
 
 
  借用申す銀子のこと
 
   
 
   丁銀二拾五貫目なり   但し申三月元日十二月切
 
                 利ノ分一割半ニシテ
 
 
   
 
   
  右は二の丸お蔵入り米我ら共へ、仰せつけられ候ところ
+
  そこで、政策の内容のために商品の往来は
  才覚相ならず。貴殿へ御頼み申し入れ候へば、前書の銀御貸し
+
  滞ってはいないのですが、鉄を鉄座が
  下され、たしかに借用つかまつり、米上納仕り候所、実正なり、しかる上は三月より
+
  一手にお買い上げになって、値段も定まって
  十二月まで一割半の加利にて元利不足なく返済仕るべく候
+
  いる状況では商品の取り扱いは不自由(?)なように見えます。
万一本人不埒仕り候はば、請け人より日限にきっとらち明け申すべく候
 
返弁方の儀ご念を入れられ候につき、この月当神門郡にて二十
 
四ヵ村より別紙証文相渡し候とおり少しも相違なく返弁仕るべく候
 
かようあい定め候上はたとえいかようの不慮新規
 
御国法しゅったい候とも、もうとう相違申すまじく候条後日
 
請け人ならびにお役所御奥書きこれを取り相渡し申すところ
 
よって件のごとし
 
 
   
 
   
  前書きのとおり承り届けお返弁の儀 相違これ無きよう
+
  一般的に諸商品の売買の様子に基づいて、私たちが以前から考えているのが右のようなところです。
  きっと申しつくべく候御奥書き件のごとし
+
  (幕府による鉄座の)政策について私どもが申しあげるのは恐れ多いことですが、
 
+
取扱いに慣れておりますので、 なにとぞこれからも幕府のおかげをもって、
 +
できるだけ広く商売をしたいと思っている次第でございます。
 
   
 
   
== 現代語訳 ==
+
  右のことについて考えておりますのは、御鉄座の御仕法のことでございます。
 
+
  これまでの通り全て御取り扱いなさり、鉄類を売買する方法は、山元(産地)との取り引きをはじめ、
松江城ニの丸のお蔵入り米を私どもに仰せつけられたけれども
+
  あらゆる方面の売り捌き方について問屋と仲買たちが当事者どうし相談をして売買をするよう仰せ付けなさってください。
算段がつきませんので、あなた様へ御頼みいたしましたところ、前書きの銀子をお貸し
+
  そうすることで鉄類の商売の販路を広げることができそうでございます。
くださることにことになり、たしかに受け取りました。
+
  また、いろいろな方面の差支えもなさそうであることはありがたいことです。
お借りしたうえは、3月から12月まで1割半の利息で元利ともに不足なく返済いたします。
+
  これから左に要求したい具体的なことを申し上げさせていただきます。
万一私ども借主がお返しできなかった時には、請け人が日限迄にきっとお返し致します。
 
間違えなくお返しいたします。返済について御念を入れられたので、宝暦14年11月、神門郡にて
 
24ヵ村より別紙証文をお渡しした通り、少しも相違無くお返し致します。
 
このように決めたうえは、いかなる別の新しい法律ができたとしても、間違えなくお返し致します。以上の通り、後日、
 
請け人及びお役所の奥書きを取りお渡ししました。
 
宝暦14年申4月(明和元年・1764年)<ref>脚註のダミーです。</ref>
 
 
 
ニの丸お蔵入り米を才覚できず、丁銀25貫目の借用申し込みをする。
 
これによって米を上納した
 
3月~12月まで一割半の利で返済を約束する
 
 
 
■借主 雲州神門郡大津の山田又右衛門、森廣幾太
 
 
 
■保証人 雲州郡知伊宮の山本仁兵衛、杵築の藤間久左衛門、松江の森脇甚右衛門
 
 
 
■貸主 西田屋幾六、角屋庄十郎
 
 
 
■松江藩勝手方役人、奉行が連著保証の奥書きをしている
 
 
 
    勝手方役人 和田理八、岡本彦助、田中幸平、後藤九兵衛、荒井助市
 
 
 
    勝手方奉行 磯崎丈太夫、湯川治兵衛、山本覚兵衛
 
 
 
 
 
== 脚註 ==
 
 
 
<references />
 
 
 
 
 
== コメント ==
 
 
 
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[[Category:中村家文書|あ]]
 
[[Category:松江藩関係|あ]]
 
目録番号:ま1-2
 
 
 
担当:島根大学法文学部社会文化学科歴史と考古コース古文書ゼミ
 
 
 
担当:古文書に親しむ会 in 桜江
 
 
 
担当:古文書に親しむ会 in 松江
 
 
 
 
 
== 文書画像と釈文 ==
 
 
 
=== 1枚目(全2枚の内) ===
 
 
 
[[ファイル:2-1-1.JPG|600px]]
 
 
 
       借用申銀子事
 
    丁銀弐拾五貫目也  但 申三月元日十二月切利ノ分壱割半ニシテ
 
  右者二之丸御蔵入米我等共江被 仰付候處
 
  才覚不相成貴殿へ御頼申入候得者前書之銀御貸
 
  被下、慥借用仕、米上納仕候所、実正也、然上者三月より
 
十二月迄壱割半之加利にて元利無不足返済可仕候
 
万一本人不埒仕候ハバ請人より日限ニ急度埒明可申候
 
返弁方之儀被入御念候ニ付、此月当神門郡ニ而弐拾
 
四ケ村より別紙證文相渡候通少無相違返弁可仕候
 
ケ様相定候上者仮令如何様之不慮新規
 
御国法出来候共、毛頭相違申間敷候条後日
 
請人并御役所御奥書取之相渡申所
 
            仍如件
 
             雲州神門郡大津借主
 
                  山田 又左衛門  印
 
  宝暦十四申十一月   同所  同断
 
                  森廣 幾太    印 
 
             同郡  知井宮
 
                  山本 仁兵衛   印
 
             同郡  杵築請人
 
                  藤間 久左衛門  印
 
             松江請人
 
                  森脇 甚右衛門  印
 
 
 
=== 2枚目(全2枚の内) ===
 
 
 
[[ファイル:2-1-2.JPG|600px]]
 
 
 
      石州銀山御領
 
          西田屋喜六 殿
 
          角屋庄十郎 殿
 
前書之通承届御返弁之儀相違無之様
 
急度可申付候御奥書如件
 
             雲州勝手方役
 
                 和田 理八
 
                 岡本 彦助
 
                 田中 幸平
 
                 後藤 久兵衛
 
                 荒井 助市
 
             同奉行
 
                磯崎 丈太夫
 
                湯川 冶兵衛
 
                山本 覚兵衛
 
            西田屋 喜六 殿
 
            角屋  庄十郎殿
 
 
 
 
 
== 書き下し文 ==
 
 
 
  借用申す銀子のこと
 
 
   
 
   
   丁銀二拾五貫目なり   但し申三月元日十二月切
+
  一、御座鉄座からの問屋仲買に対する処置については、これまでの通りになさって下さい。
                 利ノ分一割半ニシテ
+
  一、鉄類売買の取引については、問屋仲買らが当事者同士で売買出来るように申しつけて下さい。
 +
尤も、御座からは仲介手数料は受け取らない積もりでございます。                          
 +
一、鉄・釼・銑の三品ともに束を単位として運上を収めることにお決め下さい。   
 +
この束(荷物の単位)に掛かる上納はこれまでの平均値段に基づいて、
 +
鉄・釼については一束四十匁、銑は十三匁とした上で、
 +
運上銀を鉄・釼は一束に四匁、銑は三十貫目に付き三匁九分、
 +
時価の上がり下がりに拘わらず上納致します。
 +
尤も、一年に鉄・釼の大阪への登り高は十二万束の見積もりで、  
 +
一ヶ月一万束当たりの運上銀は、月々銀四十貫目とすると、
 +
右の運上銀については問屋仲買が半分づつの割合でこれを出し、上納致します。
 +
但し、見積もりで月々四十貫目上納しますが、毎年十二月になって、
 +
実際に過不足があれば、一年間の廻着高をきちんと計算をして出して下さい。
 +
尤も、銑は又別に計算をしてお納め致します。
 
   
 
   
  右は二の丸お蔵入り米我ら共へ、仰せつけられ候ところ
+
  一、問屋たちから、大坂に鉄が届いた報告が鉄座に対しあったら、
  才覚相ならず。貴殿へ御頼み申し入れ候へば、前書の銀御貸し
+
  これまでの通り厳重に鉄の束数をお調べいただき、鉄座の帳面に控えておいてください。
  下され、たしかに借用つかまつり、米上納仕り候所、実正なり、しかる上は三月より
+
  一、鉄座で持っている荷物について、印と束数が書いてある帳面を見せてください。
  十二月まで一割半の加利にて元利不足なく返済仕るべく候
+
  そうして下されば、売り捌くようご命令が有り次第、二万束は最初の二か月で売り捌くことにします。
  万一本人不埒仕り候はば、請け人より日限にきっとらち明け申すべく候
+
  代銀は三十日までに納めます。
  返弁方の儀ご念を入れられ候につき、この月当神門郡にて二十
+
  残りの荷物は、これから一か月で二千五百束づつ売って、この代銀を毎月十五日までに納めます。
  四ヵ村より別紙証文相渡し候とおり少しも相違なく返弁仕るべく候
+
  もっとも、問屋へ廻着量が多くない時は在庫の鉄の束数を多く引き受けて売りさばきます。
  かようあい定め候上はたとえいかようの不慮新規
+
  右の通りお聞き届けくだされば、有り難く存じます。
御国法しゅったい候とも、もうとう相違申すまじく候条後日
 
請け人ならびにお役所御奥書きこれを取り相渡し申すところ
 
よって件のごとし
 
 
   
 
   
  前書きのとおり承り届けお返弁の儀 相違これ無きよう
+
  天明四年辰年の十一月
  きっと申しつくべく候御奥書き件のごとし
+
  右の趣旨で仲買たちからお願いしたい理由について問屋方へ相談がありました。
 
+
そうすると、問屋たちから返答がありました。
 +
一つ、昨日二十日会って相談しました。
 +
また、願書の写しを(仲買が)お見せになり、それを写し取り、自分たちの仲間全員に回覧させました。
 +
そうしたところ、「(仲買たちも)以前からよくご存知の通り、
 +
堅実な下方荷主との交渉のみで生業を立てている問屋たちであるので、書面の内容は納得しがたく、
 +
これで良いのかどうかすぐには返答ができない」ということを問屋たちは全員申しています。
 +
   十一月二十一日夜
 
   
 
   
== 現代語訳 ==
+
天明四年辰十二月
 
+
この願書の写しは、辰十二月三日に大坂を出立し、
松江城ニの丸のお蔵入り米を私どもに仰せつけられたけれども
+
同十一日の夜に、瀬尻鑪の平十こと金十郎が
算段がつきませんので、あなた様へ御頼みいたしましたところ、前書きの銀子をお貸し
+
取り帰りました。また、大坂屋の善助殿から大森
くださることにことになり、たしかに受け取りました。
+
御役所へ参りました御用状と御添触を取り帰り、
お借りしたうえは、3月から12月まで1割半の利息で元利ともに不足なく返済いたします。
+
十二日に大森の藤井様の御家来に便りを大森へ
万一私ども借主がお返しできなかった時には、請け人が日限迄にきっとお返し致します。
+
右の御用状と御添触を遣わしました。
間違えなくお返しいたします。返済について御念を入れられたので、宝暦14年11月、神門郡にて
 
24ヵ村より別紙証文をお渡しした通り、少しも相違無くお返し致します。
 
このように決めたうえは、いかなる別の新しい法律ができたとしても、間違えなくお返し致します。以上の通り、後日、
 
請け人及びお役所の奥書きを取りお渡ししました。
 
宝暦14年申4月(明和元年・1764年)<ref>脚註のダミーです。</ref>
 
 
 
ニの丸お蔵入り米を才覚できず、丁銀25貫目の借用申し込みをする。
 
これによって米を上納した
 
3月~12月まで一割半の利で返済を約束する
 
 
 
■借主 雲州神門郡大津の山田又右衛門、森廣幾太
 
  
■保証人 雲州郡知伊宮の山本仁兵衛、杵築の藤間久左衛門、松江の森脇甚右衛門
 
  
■貸主 西田屋幾六、角屋庄十郎
 
  
■松江藩勝手方役人、奉行が連著保証の奥書きをしている
 
  
    勝手方役人 和田理八、岡本彦助、田中幸平、後藤九兵衛、荒井助市
 
  
    勝手方奉行 磯崎丈太夫、湯川治兵衛、山本覚兵衛
 
  
 +
    
  
 
== 脚註 ==
 
== 脚註 ==

2018年7月6日 (金) 06:29時点における最新版

目録番号:ま136

担当:島根大学法文学部社会文化学科歴史と考古コース古文書ゼミ


文書画像と釈文,書き下し文[編集]

1枚目(全6枚の内)[編集]

ま-136(1).JPG

乍憚口上

去ル子年被為鉄座御取立成私共義仕
来り候商売之筋御糺之上問屋并仲買
共株被仰付永久安堵之義難有仕合
奉存候則御仕法之趣ヲ以代呂物往来差
滞之儀ハ無御座候得共鉄荷之儀御座ヘ
一手ニ御買上ヶ被置成直段等も差定リ

憚りながら口上

去る子年、鉄座御取立て成させられ,私共義仕り
来り候商売の筋御糺しの上、問屋并びに仲買
共株に仰せ付けられ、永久安堵の義、有難き仕合せに
存じ奉り候則ち御仕法の趣を以って、代ろ物の往来、差し
滞りの儀は御座無く候えども、鉄荷の儀御座へ
一手に御買上げ成し置かれ直段等も差し定まり

2枚目(全6枚の内)[編集]

ま-136(2).JPG

在之候様ニてハ代呂物之取遣不□之筋
相見ヘ申候惣体諸代呂物売買之様子
ヲ以私共兼々相考候所、右之通リ奉存候
御仕法之儀ヲ彼是申上候段奉恐入候得共
取扱相馴候儀ニ付何卒此上共御陰ヲ以
取続□手広ニ商売も仕度奉願候儀ニ
御座候右ニ付奉存候得者御座方御仕法
之儀ハ是迄之通り万事御取扱為
成鉄類売買方之儀ハ山元仕切ヲ初メ諸向
売捌方共問屋中買共相対ヲ以売買仕候
様被為仰付候ハ﹅鉄類商売かた手広
(有脱カ)
相成候様尤諸向之差支も無之筋与難
奉存候依之左ニ奉申上候
一、御座ゟ問屋仲買御取扱万端是迄之
これ在り候様にては代ろ物の取り遣り□ざるの筋
相見え申し候、惣体、諸代呂物の売買の様子
を以て私共兼々相考え候所、右の通り存じ奉り候、
御仕法の儀を彼れ是れ申し上げ候段恐れ入り奉り候得共、
取り扱い相馴れ候儀に付き、何とぞ此の上共御蔭を以て
取り続き□手広に商売も仕りたく願い奉り候儀に
御座候、右に付き存じ奉り候えば、御座方御仕法
の儀はこれ迄の通り万事御取り扱い成させられ、
鉄類売買方の儀は山元仕切りを初め、諸向き
売り捌き方共問屋・中買共相対を以って売買仕り候
様仰せ付けさせられ候わば、鉄類商売かた手広く
相成り候様、尤も諸向きの差し支えもこれ無き筋と有り難く
存じ奉り候、これに依り左に奉り上げ候
 一、御座より問屋仲買御取り扱い、万端是までの

3枚目(全6枚の内)[編集]

ま-136(3).JPG

通り被為成下度事
一、鉄類売買取引方之儀ハ問や仲買双方
  以相対売買被為仰付候様仕度尤御座ゟ
  口銭銀ハ受取不申心得ニ御座候
    (鉄)
一、■釼銑三品共束運上ニ御定め被為成下度
  事此束掛り上納之儀ハ是迄平キン均直段  
   (衍字)
  直段ヲ以鉄釼凡四拾目つゝ銑ハ拾三匁
  つゝ鉄釼束ニ四匁つゝ銑三拾貫目ニ付
  三匁九分つゝ時々高下ニ不抱上納可仕候
  尤壱ヶ年凡鉄釼登り高ハ拾弐万束之
  積りヲ以壱ヶ月壱万束之引当として
  月々銀四拾貫目つゝ右運上銀問屋中買
  ゟ半分宛割合出之上納仕度候但シ毎年
  極月ニ相成候て月々四拾貫目つゝ差上置候
  運上銀過不足之儀ハ年分廻着高ヲ以
  
一、御座より問屋仲買御取り扱い、万端是までの
    通り成し下させられたき事
一、鉄類売買取引方の儀は、問屋仲買双方
  相対をもって売買仰せ付けさせられ候よう仕りたく、尤も御座より
  口銭銀は受け取り申さざる心得に御座候
一、鉄釼銑三品とも、束運上に御定め成し下させられたき
  事、此の束掛かり上納の儀は、是まで平均直段
   を以て鉄釼凡そ四拾目ずつ、銑は拾三匁
   ずつ、鉄・釼束に四匁ずつ、銑三拾貫目に付き
   三匁九分ずつ、時々高下に拘わらず上納仕るべく候
   尤も、壱ヶ年凡そ鉄・釼登り高は拾二万束の
   積もりを以て壱ヶ月壱万束の引き当てとして
   月々銀四拾貫ずつつ、右運上銀問屋中買
   より半分ずつ割合之をいだし上納仕りたく候、但し、毎年
   極月に相成り候て月々四十貫目つつ差し上げ置候
   運上銀過不足の儀は年分廻着高を以て

4枚目(全6枚の内)[編集]

ま-136(4).JPG

 御勘定御調被下度候尤銑之義ハ別段
 ニ御勘定仕相納メ可申事
一、問屋共ゟ廻着御座へ相届ケ候ハヽ是迄之
 通り厳重ニ廻着束数早速御見分
 被為成下御座御長面御扣置被為成下候事
一、御座有御荷物之儀印束数御長面御見せ
 可被下候左候ハヽ相捌方之儀ハ被為仰付候
 ハヽ弐万束ハ最初両月売捌申則
 代銀三拾日限り宛上納可仕候相残り
 荷物之儀ハ壱ケ月ニ弐千五百束つヽ売退キ
 可申候此代銀十五日限り相納メ可申候尤
 問屋方へ廻着之余度も無暫時ハ
 随分出精致別段ニ束数多ク引請
 取捌可仕候事
 右之通り御聞届ケ被為成下候ハヽ一統
 難有奉存候以上
  御勘定御調え下されたく候、尤も銑の儀は別段
  に御勘定つかまつり相納め申すべき事
一、問屋共より廻着、御座へ相届けそうらわば、これまでの
 通り厳重に廻着束数早速御見分
 成し下させられ、御座御長面御扣え置き成し下させられそうろう事
一、御座有り御荷物の儀、印、束数御長面御見せ
 下さるべくそうろう。左そうらわば、相捌き方の儀は仰せ付けさせられそうら
 わば、弐万束は最初両月売り捌き申し、則ち
 代銀三拾日限りづつ、上納仕るべくそうろう。相残り
 荷物の儀は、壱ケ月に、弐千五百束づつ売り退き
 申すべくそうろう。この代銀十五日限り相納め申すべくそうろう。もっとも
 問屋方へ廻着の余度も暫くなき時は
 随分出精致し、別段に束数多く引き請け
 取り捌き仕るべくそうろう事
 右の通り御聞き届け成し下させられそうらはば、一統
 有り難く存じ奉りそうろう、以上

5枚目(全6枚の内)[編集]

ま-136(5).JPG

  天明四辰十一月
    右之趣仲買中ゟ願度之由ニ而
    問屋方ヘ相談有之則問屋中ゟ
    返答之事
    一昨廿日御申聞猶又御願書之写シ
    御見せ則写シ取此方仲間一統江一覧
    為致候然ル所問屋共ハかね而御安内
    之通り律儀成ル下もかた荷主
    掛合のミニて渡世致候問屋共ニ候得ハ
    御書面之趣かつてん行不申候ゆへ
    差当り否哉之御返答難及よし問屋
    中間一統申之候
      十一月廿一日夜
      天明四辰十一月
    右の趣仲買中より願いたきの由にて
    問屋方へ相談これあり。則ち、問屋中より
    返答の事。
    一つ、昨廿日お申し聞け、なお又、御願書の写し
    お見せ、則ち写し取り、此方仲間一統へ一覧
    致させ候。然る所、問屋共はかねてご安内
    の通り、律儀成る下もかた荷主
    掛け合いのみにて渡世致し候問屋共に候えば、
    御書面の趣かつてん行き申さず候ゆへ、
    差し当たり否哉の御返答及び難きよし、問屋
    中間一統これを申し候。
      十一月廿一日夜

6枚目(全6枚の内)[編集]

ま-136(6).JPG

 天明四年辰十二月
此願書写辰十二月三日大坂出立
        平十事
同十一日夜瀬尻鑪金十郎
取帰リ申候并大坂屋善助殿ゟ大森
御役所へ参候御用状御添触取帰リ
十二日大森藤井様御家来帰リ便リ大森
右御用状御添触遣申候
   天明四年辰十二月
此の願書写し辰十二月三日大坂出立、
        平十事
同十一日夜瀬尻鑪金十郎
取り帰り申し候、并びに大坂屋善助殿より大森
御役所へ参り候御用状御添触取り帰り、
十二日大森藤井様御家来帰り便り大森
右御用状御添触遣わし申し候

現代語訳[編集]

憚りながら口上
去る子年に幕府が鉄座をお設けなさった時に、私共の
商売の筋をお調べなさって、問屋と仲買に
株を末長くお認めになったことは
ありがたく思います。

そこで、政策の内容のために商品の往来は
滞ってはいないのですが、鉄を鉄座が
一手にお買い上げになって、値段も定まって
いる状況では商品の取り扱いは不自由(?)なように見えます。

一般的に諸商品の売買の様子に基づいて、私たちが以前から考えているのが右のようなところです。
(幕府による鉄座の)政策について私どもが申しあげるのは恐れ多いことですが、
取扱いに慣れておりますので、 なにとぞこれからも幕府のおかげをもって、
できるだけ広く商売をしたいと思っている次第でございます。

右のことについて考えておりますのは、御鉄座の御仕法のことでございます。
これまでの通り全て御取り扱いなさり、鉄類を売買する方法は、山元(産地)との取り引きをはじめ、
あらゆる方面の売り捌き方について問屋と仲買たちが当事者どうし相談をして売買をするよう仰せ付けなさってください。
そうすることで鉄類の商売の販路を広げることができそうでございます。
また、いろいろな方面の差支えもなさそうであることはありがたいことです。
これから左に要求したい具体的なことを申し上げさせていただきます。

一、御座鉄座からの問屋仲買に対する処置については、これまでの通りになさって下さい。
一、鉄類売買の取引については、問屋仲買らが当事者同士で売買出来るように申しつけて下さい。
尤も、御座からは仲介手数料は受け取らない積もりでございます。                            
一、鉄・釼・銑の三品ともに束を単位として運上を収めることにお決め下さい。   
この束(荷物の単位)に掛かる上納はこれまでの平均値段に基づいて、
鉄・釼については一束四十匁、銑は十三匁とした上で、
運上銀を鉄・釼は一束に四匁、銑は三十貫目に付き三匁九分、
時価の上がり下がりに拘わらず上納致します。
尤も、一年に鉄・釼の大阪への登り高は十二万束の見積もりで、  
一ヶ月一万束当たりの運上銀は、月々銀四十貫目とすると、
右の運上銀については問屋仲買が半分づつの割合でこれを出し、上納致します。
但し、見積もりで月々四十貫目上納しますが、毎年十二月になって、
実際に過不足があれば、一年間の廻着高をきちんと計算をして出して下さい。
尤も、銑は又別に計算をしてお納め致します。

一、問屋たちから、大坂に鉄が届いた報告が鉄座に対しあったら、
これまでの通り厳重に鉄の束数をお調べいただき、鉄座の帳面に控えておいてください。
一、鉄座で持っている荷物について、印と束数が書いてある帳面を見せてください。
そうして下されば、売り捌くようご命令が有り次第、二万束は最初の二か月で売り捌くことにします。
代銀は三十日までに納めます。
残りの荷物は、これから一か月で二千五百束づつ売って、この代銀を毎月十五日までに納めます。
もっとも、問屋へ廻着量が多くない時は在庫の鉄の束数を多く引き受けて売りさばきます。
右の通りお聞き届けくだされば、有り難く存じます。

天明四年辰年の十一月
右の趣旨で仲買たちからお願いしたい理由について問屋方へ相談がありました。
そうすると、問屋たちから返答がありました。
一つ、昨日二十日会って相談しました。
また、願書の写しを(仲買が)お見せになり、それを写し取り、自分たちの仲間全員に回覧させました。
そうしたところ、「(仲買たちも)以前からよくご存知の通り、
堅実な下方荷主との交渉のみで生業を立てている問屋たちであるので、書面の内容は納得しがたく、
これで良いのかどうかすぐには返答ができない」ということを問屋たちは全員申しています。
   十一月二十一日夜

天明四年辰十二月
この願書の写しは、辰十二月三日に大坂を出立し、
同十一日の夜に、瀬尻鑪の平十こと金十郎が
取り帰りました。また、大坂屋の善助殿から大森
御役所へ参りました御用状と御添触を取り帰り、
十二日に大森の藤井様の御家来に便りを大森へ
右の御用状と御添触を遣わしました。




    

脚註[編集]


コメント[編集]

<comments hideform="false" /> トーク:鉄座について大森御役所への口上