「石州銀山近里巡礼縁起」の版間の差分

提供:桜江古文書を現代に活かす会
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九番 川合村
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 聖観音     八百山神宮寺
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  むらさきの 雲こそかゝれ 八百山の
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   光やはらく あけほのゝ空
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 建興寺へ十八丁
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十番 吉永村
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 聖観音     天王山建興寺
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  仰ミれハ 天おそろしき 深山かな
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   心すつへき 木かくれもなし
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 圓光寺へ壱里十丁、此間に大田村町有、新市ゟ
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 二丁程北へより、霊仏の薬師堂あり、又北
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 南に八幡の宮あり、南の宮に六十六部
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 を納る経堂有
  
 
=== 15枚目(全27枚の内) ===
 
=== 15枚目(全27枚の内) ===

2021年12月11日 (土) 11:49時点における版

目録番号:

担当:古文書に親しむ会 in 桜江


文書画像と釈文

1枚目(全27枚の内)

Engi 1.JPG

観音謂来
   巡礼謂来
   巡礼十種徳
   道法案内

 石州銀山近里巡礼縁起
    

2枚目(全27枚の内)

Engi 2.JPG

具一切功徳慈眼視衆生
福聚海無量是故応頂礼
  此文を唱て可礼拝

南無大慈大悲観世音菩薩
種々重罪五逆消滅自他平
等即身成仏
  此文を唱て可打札

抑上西国巡礼は紀州熊
野権現[1]めくり始給うといへ
とも、一度中絶する也、其後人王[2]

3枚目(全27枚の内)

Engi 3.JPG

六十五代の御門花山院[3]御菩提
の御心かけ深きゆへ、終には御
遁世[4]ありて御法名を入覚法
皇と申奉る、有夜夢中に
権現告曰、昔法華経一万部
御書写、播磨国書写寺[5]開山性
空上人を冥土[6]へ召て供養道
師に御定事おはりて、大王上人
示て仰けるは、娑婆[7]に観音
霊地三十三所有、此地を一度
巡礼すれは、たとひ五逆十

4枚目(全27枚の内)

Engi 4.JPG

悪の者たり共、罪を滅し現世にて
一切の悪難を遁れ、来世にてはかな
らす極楽へ往生すへし、此事若妄
語[8]と成す十王[9]共に地獄におつへしと
石にほり付たる記文閻魔[10]より
上人直に請取、(摂)津国中山寺[11]の麓に
納て今に有、はやくおほしめし
立たまふへし、たれかしも御伴ない御
道引申奉らんと御ゆめは醒に
けり、法皇御悦ありて、頓て御
巡礼被遊ける、それより以来不

5枚目(全27枚の内)

Engi 5.JPG

改今に至りて諸人巡礼し給也、
しかれは皆望ありといへとも、或は
縁に障られ、或は身体不自由
にして上西国のおもひ立不成輩、
我か国の内にて安く巡礼し、菩
提の道に為入霊地三十三所を定
る也、爰にむかし虚公と云仙人
あり、遠き所を近く我か国の
内へ自由に引寄ておもふ、其所お
めくりたりとなり、今上西国へ
不往して、此所にて巡礼せし事ハ

6枚目(全27枚の内)

Engi 6.JPG

是に不異、補陀洛世界も去此
不遠なり、爰に十方諸国土
無刹不現身の薩埵なれは、
南無大慈大悲観世音菩薩
と御名を唱ふる、其聲に随ひ
忽現身して、諸衆生、諸悪業、
障の苦を抜、毒害を消伏して、
楽を与たまへは、一切悪鬼虎
狼蚖蛇もがいをなす事あた
ハず、すみやかに退ぬと也、大士

補陀洛…観音菩薩の降臨する霊場。

現身…仏菩薩が衆生を救うために変化して現われた色身、肉身をいう。

十方…東・西・南・北の四方、北東・南東・南西・北西の四隅と上・下の方角。あらゆる方面。すべてのところ。

薩埵…有情、衆生、およそ生命あるもののすべての称である。菩提薩埵の略。 菩薩。

大慈…仏・菩薩が衆生をいつくしみ苦しみを救う、その広大な慈悲。

大悲…衆生の苦しみを救う仏・菩薩の大きな慈悲。

現身…現世に生をうけている姿。うつしみ。

衆生…迷いの世界にあるあらゆる生類。仏の救済の対象となるもの。

悪業…悪い報いをもたらす、悪いおこない。

7枚目(全27枚の内)

Engi 7.JPG

の御慈悲力、海底も無窮、随
類現形広大の解脱門恒沙
も難算、諸人如此の深恩を
咸、万事をなけうち、いそき
巡礼したまひて成仏の
縁を結ひ給へし、又所を三十
三に限る事は、大士御慈悲
の余に身を三十三に化け毎
事に衆生を利益したまふ
因縁あらん也、信心深達者

無窮…果てしないこと。きわまりがないこと。また、そのさま。

随類…仏菩薩が、衆生凡夫(愚かな煩悩を断じていない衆生をいう)の素質、能力の相違にしたがって身を現わし、 教化すること。

解脱門…解脱(俗世間の束縛・迷い・苦しみからぬけ出し、悟りを開くこと)に入る門として、迷いから解放させる 方法となる禅定(ぜんじょう:思いを静め、心を明らかにして真正の理を悟るための修行法)。

恒沙…恒河(=ガンジス川)の砂の意。無限の数量のたとえ。

因縁…物事はすべて、その起原(=因)と、果を結ばせる作用(=縁)とによって、定められていること。転じて、 物事の持っている定まった運命。

    

8枚目(全27枚の内)

Engi 8.JPG

成人々は、遠き上西国をも
巡礼あるへし、不及輩ハ何そ
近き郡郷を心に任てそろ〳〵
巡礼せさらん、難有事なれ
は、明日令不可謂時不待人
年、既に往きぬはやくおほ
しめし立かうにて、身口
意清浄にして、無余念
一心に大悲の御名を唱へて
無疑巡礼あるへし

身口意…身体的活動(=身)と言語活動(=口)と精神活動(=意)。人間の一切の活動。

9枚目(全27枚の内)

Engi 9.JPG

南無大士観世音菩薩
熊野権現巡礼十種徳曰

一、不惑三悪道
二、照絡時可正念
三、為巡礼人家諸仏有願向
四、六観音梵字可在額
五、福智可円満
六、子孫繁昌
七、一生中膺供養僧

10枚目(全27枚の内)

Engi 10.JPG

八、可生補陀洛世界
九、没定可往生
十、諸願可成就

道法案内

壱番 銀山 清水谷
 十一面観音    銀峯山清水寺
  うち初る 補陀洛山も これそこの
   清水寺の たきつしう波

  神宮寺へ道八丁

弐番 同所 栃畑
 十一面観音    岩屋山神宮寺
  岩倉や 其夜灯火に あけしより
  神と法との たへぬひのもと

11枚目(全27枚の内)

Engi 11.JPG

此近所長安寺に霊仏の観音安座、
 并毛利元就公の御影あり、又八丁計
 登り昆布山谷に元就公建立の
 役行者堂あり、志の方は往て
 拝せらるへし

  龍昌寺へ十八丁下へ戻る

三番 銀山 下川原
 聖観音      玉峯山龍昌寺
  ほからかに 玉のミねこす 山のその
   星をさとりの たねとこそミれ

快算院へ十三丁

四番 大森 大森
 聖観音      石城山快算院
  世の音を 観ても聞ても 一切衣生
   □□□たすけん 石城月

12枚目(全27枚の内)

Engi 12.JPG

五番 同所
 十一面観音    安養山勝源寺
  勝つる 源清き 池水ハ
   燃る火消し ためしなるらん

 善興寺え壱里半、骨折と云坂
 あり、大国町大井手と云所に
 川一瀬

六番 天河内村
 聖観音     福應山善興寺
  よき事を 興は法の 種なれハ
   後の色安き 身とも成なん

 波啼寺へ二十五丁、大井手川下を渡る、
 仁万と云町有

13枚目(全27枚の内)

Engi 13.JPG

七番 宅野村
 聖観音     濤来山波啼寺
  わすれすは すくひましませ 御仏の
    うきよのやみに なきわたる身を

 金剛山へ二里八丁、此間に赤井、大浦
 湊なと云在所あり

八番 静間村
 聖観音     金剛山安楽寺
  金剛の 山鳥の尾の なかき世を
   いのかや老の あし引の坂

 神宮寺四十丁、川二瀬、延里、
 行恒を通る

14枚目(全27枚の内)

Engi 14.JPG

九番 川合村
 聖観音     八百山神宮寺
  むらさきの 雲こそかゝれ 八百山の
   光やはらく あけほのゝ空

 建興寺へ十八丁

十番 吉永村
 聖観音     天王山建興寺
  仰ミれハ 天おそろしき 深山かな
   心すつへき 木かくれもなし

 圓光寺へ壱里十丁、此間に大田村町有、新市ゟ
 二丁程北へより、霊仏の薬師堂あり、又北
 南に八幡の宮あり、南の宮に六十六部
 を納る経堂有

15枚目(全27枚の内)

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16枚目(全27枚の内)

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17枚目(全27枚の内)

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18枚目(全27枚の内)

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19枚目(全27枚の内)

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20枚目(全27枚の内)

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21枚目(全27枚の内)

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22枚目(全27枚の内)

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23枚目(全27枚の内)

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24枚目(全27枚の内)

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25枚目(全27枚の内)

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26枚目(全27枚の内)

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27枚目(全27枚の内)

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書き下し文

現代語訳

脚註

  1. 熊野三山の祀られる神々をいう
  2. 名詞神代に対し、人代になってからの天皇のこと。神武天皇以後の天皇
  3. 永観二年(九八四)~寛和二年(九八六)在位。寛弘五年(一〇〇八)没
  4. 世間をのがれ(=遁)去り、俗とのかかわりを絶つこと。仏門に入ること。
  5. 書写山圓教寺…康保三年(九六六)性空創建と伝える。花山法皇が、寛和二年(九八六)に来山して、圓教寺の勅号を与え、米百石を寄進したという。
  6. 死者の霊魂の行く世界。あの世。地獄・餓鬼・畜生の三悪道をいう
  7. 釈迦が衆生を救い教化する、この世界。煩悩や苦しみの多いこの世。
  8. うそをつくこと。 法を会得していないのに会得したように言うことや、不実な言葉。
  9. 死後の世界である冥府で亡者を裁く十人の欧をいう。
  10. 死者の生前の行為、罪の軽重を審判する。地獄の大王。
  11. 聖徳太子が創建したと伝わる日本最初の観音霊場。八月九日夜に西国三十三か所の観音が星に乗って本堂に集まるとされる。


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