菩提寺旦那の取り決め
目録番号:の22
担当:島根大学法文学部社会文化学科歴史と考古コース古文書ゼミ
文書画像と釈文、書き下し文
1枚目(全5枚の内)
天明三卯年九月 被仰渡候趣御請書 石見国邑知郡 浜原村
2枚目(全5枚の内)
覚 一他所ゟ嫁参候節夫菩提寺之旦那ニ不相成実方 菩提寺之旦那ニ成居相果候後家内之内ゟ其跡ヲ 続実方菩提寺之旦那ニ相成候儀有之候得共以来ハ 何方ゟ嫁来候共女房ハ夫之菩提寺旦那たるへき事 一子供何人有之候共親ニ同居之内ハ其親之菩提寺 可為旦那事 一子供之内分地致候共親同寺之旦那可為事 但由緒有之他旦ニ相成度節親之旦那寺
覚 一他所より嫁ぎ参り候節、夫菩提寺の旦那に相成らず、実方 菩提寺の旦那に成居り相果てそうろう後、家内の内よりその跡を 続ぎ、実方菩提寺の旦那に相成りそうろう儀これ有りそうらえども、以来は 何方より嫁ぎ来りそうらえども、女房は夫の菩提寺旦那たるべき事 一子供何人これ有りそうらえども、親に同居の内はその親の菩提寺 旦那たるべき事 一子供の内分地致しそうろうとも親同寺の旦那たるべき事 但し、由緒これ有り他旦にあい成りたき節、親の旦那寺
3枚目(全5枚の内)
故障も無之其外一同於得心者双方ゟ役所へ相 届他旦ニ可成事 一家内之内々別株之百性懸り居家主と同寺旦那 無之候共改宗ハ難成懸り居候もの代々宗旨旦那可為事 一壱季半季ニ差置候下男下女ハ其者銘々之宗旨 旦那たるべき事 但譜代もの抔子孫断絶致候ハヽ旦縁跡継之儀者 主人勝手次第可為事 一親類縁者之内田畑譲請候歟又ハ聟養子娵等を 貰候節田畑附遣候由緒を以妻子之内ゟ親元并 田畑譲請候者之菩提寺旦那ニ成居其者相果候共 養子ハ養父之菩提寺旦那女房ハ夫之菩提寺 之旦那ニ可成筋ニ付其者一代限ニ而旦縁跡継者 不立事 附女房実親之菩提寺旦那ニ付其由緒を以子供之内 旦縁跡継ニ立置候分有之者聟養子娵等参候得者 縁付候者方菩提寺旦那ニ相成事ニ候間跡継ハ 是又不立事 一聟養子娵等年数相立離縁致候共銘々親元
一子供の内分地致しそうろうとも親同寺の旦那たるべき事 但し、由緒これ有り他旦にあい成りたき節、親の旦那寺 故障もこれ無く其の外一同得心に於いては双方より役所へあい 届け他旦に成るべき事 一家内の内々別株の百姓懸り居る家主と同寺の旦那 これ無くそうろうとも、改宗は成り難し、懸り居りそうろうもの代々宗旨旦那たるべき事 一壱季半季に差し置きそうろう下男下女は其の者銘々の宗旨 旦那たるべき事 但し、譜代ものなど子孫断絶致しそうらはば旦縁跡継の儀は 主人勝手の次第たるべき事 一親類縁者の内田畑譲り請けそうろうか、又は聟養子娵などを 貰いそうろう節、田畑附け遣わしそうろう由緒を以て妻子の内より親元ならびに 田畑譲り請けそうろう者の菩提寺旦那に成り居り、その者あい果てそうろう共 養子は養父の菩提寺旦那、女房は夫の菩提寺 の旦那に成るべき筋に付き、その者一代限りにて旦縁跡継ぎは 附けたり、女房実親の菩提寺旦那に付き、其の由緒を以て子供の内 旦縁跡継ぎに立て置きそうろう分之有らば、聟養子娵等参りそうらえば、 縁付きそうろう者方菩提寺旦那にあい成る事にそうろう間、跡継ぎは 是また立てざる事 一聟養子娵等年数あい立ち、離縁致しそうろうとも、銘々親元
4枚目(全5枚の内)
之菩提寺旦那可為事 一祈願ニ而他之旦那成候儀祈願斗ハ勝手次第ニ候得共 菩提所共ニ祈願寺旦那ニハ不相成事 前書之通リ被仰渡承知奉畏以来御ケ條之堅ク 相守可申候依御請印形差上ヶ申候己上 卯九月 石見国邑知郡 浜原 寺院
の菩提寺旦那たるべき事 一祈願に而他の旦那成りそうろう儀、祈願ばかりは勝手次第にそうらえども、 菩提所共に祈願寺旦那にはあい成らざる事 前書の通り仰せ渡され承知畏み奉り以来御ケ条の趣き堅く あい守るべく申しそうろう依り御請け印形差上げ申し候以上 卯九月 石見国邑知郡 浜原 寺院
5枚目(全5枚の内)
前書之通リ被仰渡承知奉畏惣百姓へも不洩様 申聞以来ハ御ケ條之趣堅ク相守可申候依之御請連印 差上ヶ申候以上 卯九月 石見国何村 庄屋 頭百姓 百姓代
前書の通り仰せ渡され承知畏み奉り惣百姓へも洩らさざる様 申し聞き以来は御ケ条の趣き堅くあい守るべく申しそうろう之依り御請け連印 差上げ申しそうろう以上 卯九月 石見国何村 庄屋 頭百姓 百姓代
現代語訳
一よその所から嫁に来た折、夫の菩提寺の旦那に成らず、実家の菩提寺の旦那のままでいて、 その人が亡くなった時、その家の中から跡を継いで実家の菩提寺の旦那にしておくという事 があるけれども、 この後は、どこから嫁に来ても、女房は夫の菩提寺の旦那とするべき事。 一子どもが何人あろうとも、親と同居のうちは、その親の菩提寺の旦那とするべき事。
一、子供が分家をしても親と同じ寺の旦那であること 但し事情があって他の旦那になりたい場合は、親の旦那寺が異議を唱えずその他一同も承認すれば双方の旦那寺から役所へ届けて他の寺の旦那になること 一、同じ家に住んでいる別株の家族は、頼って住ませてもらっている家の主人と同寺の旦那でなくても、改宗してはならず代々の宗旨の旦那であること 一、一年や半年の奉公人として住んでいる下男下女は各自の宗旨の旦那であること 但し譜代奉公人など子孫が断絶している者の旦縁の跡継ぎについては主人が決めること 一親類縁者から田畑を譲り請けたか、または、聟養子や嫁などをもらった際に田畑附きであった場合に、 妻子のうちから、その親元か、または田畑を譲ってもらった者の菩提寺旦那に成っている者がいる. もし、その者がなくなったとしても、養子は養父の菩提寺旦那、女房は夫の菩提寺旦那に成る事が原則なので、 その者が実家の菩提寺旦那になる事が出来るのは一代限りなので、次の世代に旦那の跡を継がせてはならない。
加えて、女房が実家の菩提寺の旦那えあるため、そうした事情をうけつぎ、子供のうち 旦縁の跡継ぎになっている者がいる場合、婿養子や嫁などとしてでむいたならば、 縁付先の家の菩提寺の旦那になるべきであるので、跡継ぎは また立てないこと 一、婿養子や嫁などが年数が経って、離縁する事になっても、各自親元 の菩提寺の旦那になること 一 、祈願をするためにほかの寺の旦那がなることは、祈願だけであれば自由であるが、 菩提所の方も祈願寺の旦那にはならないこと
前書の通りにおっしゃられたように承知致してからは、御ケ条の趣旨を堅く重んじ、 お互いに守るようにと申し上げたので御請け印形を差上げました以上。 前書の通りにおっしゃられたように承知致し、 惣百姓達へも洩らしていないないという様子をお聞きしてからは御ケ条を重んじ、 お互いに守るようにと申し上げた上で御請け連印を差上げました以上。
脚註
コメント
<comments hideform="false" /> トーク:菩提寺旦那の取り決め