五人組前書控
目録番号:て10
担当:古文書に親しむ会 in 松江
五人組とは(解説)
江戸時代の村や町における最末端の行政組織。村では本百姓、町では家持ち、家主をそれぞれ近隣の5戸ずつを原則として組み合わせて構成した。 五人組の機能は,年貢納入、治安維持につき組の構成員が連帯責任を負うところにあり、組内に年貢不納の者や欠落をするものが出ると、組として 弁済の責任を負わされ、また5人組内に犯罪者がいるときは、密告を強制され、知りながらそれを怠ると処罰された。また日常的に監視しあうこと を強いられた。その反面、五人組の百姓は、仲間として日常生活での相互援助も行ったが、どちらかと言えば農民の支配や監視のための組織という 性格が強かった。 前書は、農民や町民の日常生活にかかわる細かい規定が、通常20~50条、長いのは百数十か条書かれている。通常、村・町役人がこれを農民や町民 に読み聞かせ、一同がそれを厳守することを約束している。本文は、五人組ごとに組頭を筆頭に各戸主が連印している。毎年2冊作成し、1冊を領主 に出し、1冊を村方、町方に置いた。
前書各項目の要約
一訴え事の停止 一相互見張り 一キリシタン禁制 一家内和合・孝行 一企て事の禁止 一耕作精勤奨励 一不労者の吟味 一田畑・屋敷・山林等売買禁止 一金具類売買禁止 一庄屋の資質・心構え 一悪事の厳罰 一衣類の規制・質素奨励 一結婚式の質素奨励 一捨子禁止と村での養育 一鶴・白鳥捕縛禁止 一牛馬売買禁止 一寺社新規建立禁止 一住職交代注進 一村内不審者調査 一入村者・脱走者注進 一新規入村者身元調査 一田畑無配分者の処置方 一奉公出村者の処置方 一土地争いの禁止 一新規の酒造業の禁止 一娯楽(能・狂言・繰勧進・相撲・芝居・見世物等)禁止 一遊女・野郎の入村禁止 一村内宿貸しの禁止 一村内行き倒れの処置・看病後在所へ連絡 一死人・倒れ者等番人の監視 一火事・喧嘩・盗人・口論等注進 一集会騒動の禁止 一田畑不耕作禁止 一隠田畑の禁止 一衣食の糧にならぬ耕作禁止 一田畑拡張の禁止 一用水・引き水渇水時の騒動にならぬよう常々用心 一水論・境論の争い禁止 一武家への慮外行為禁止 一伝馬・助郷の適正迅速な対応 一渡船賃の適正化と暴利の禁止 一往還・街道の人馬円滑な運用 一利用者の無法注進 一御朱印寺社の田畑屋敷売買禁止 一新田畑開発禁止 一公儀への上申奨励 一田畑潰・空地への屋敷拡大禁止 一村内寄合所・番屋へ番人附け火用心 一堤・川岸水害の常々注意用心 一村送り廻文の迅速な対応 一村の諸道具の見張り用心 一満水・火事・盗人等対応の村民結束奨励 一鉄砲の不所持 一竹木・枝葉・下草切取り禁止 一草木の根堀禁止 一草木植林の推進 一博打・勝負事の禁止 一不行儀者の注進 一代官所・江戸への訴訟費用の自前・村入用使用の禁止 一村外泊時村役人の承認 一村外奉公時村役人の承認 一商売物高値禁止 一年貢小物成納入厳守 一年貢米立会品揃えの事 一年貢米俵包厳重の事 一年貢米搬送船乗り組み人の保証 一年貢銀庄屋集約厳重の事 一百姓不信無いように公正に行う事 一郷蔵の手入れ・管理の徹底 一年貢免定公開の方法 一百姓大小によらず公正な公開 一村入用費・夫銭も公平に実施 一村入用費無駄遣いの禁止 一寄合・労働後の飲食用村入用費支出費禁止 一贈答・礼物・贈り物禁止 一貸物・借物・押売り・押し買い禁止 一役人・手代等廻村者の村役人承認書携帯 一役人・手代への贈答品・飲食提供禁止 一百姓帯刀禁止・奉公帯刀者も村内禁止
文書画像と釈文
1枚目(全35枚の内)
享和弐壬壱戌年 五人組前書控 大貫村
2枚目(全35枚の内)
條々 一前々従公儀被仰出候御定目当時 被仰出候御法度之趣村中大小之百姓 下々迠弥堅可相守事 一御料所村々百姓共御取箇(とりか)并夫食(ふじき) 種貸等其外預筋之儀ニ付強訴(ごうそ)徒党(ととう)
3枚目(全35枚の内)
逃散(ちょうさん)候儀者堅御停止(ごちょうじ)ニ候處近来御料 所之内ニ茂右躰之願筋ニ付御代官 陣屋江大勢相集致訴訟候儀も有之 不届至極ニ候、自今以後厳敷御吟味之上 重御罪科ニ可被行条百姓共江兼々急度 可申付置与被仰渡候間可得其意事 一五人組之儀町場者家並在所者最寄 次第家五軒宛組合子供并下人店借 地借之者ニ至迠悪事不仕様組中常々 無油断可令詮儀、若平生行跡不宜者 有之庄屋申付をも不用候ハバ可訴出事 一切支丹転ひ之者并類族有之分ハ別帳ニ
4枚目(全35枚の内)
記可差出候若他所より縁組等ニ而当村江 右之族来候者早速可致注進事 一毎年宗門帳三月迠之内可差出、若御法度 之宗門之者有之者早速可申出候切支丹 宗門之儀者御高札之旨可相守、宗門帳之 通 人別念入相改宗門帳相済候後召抱候 下人等者寺請状別紙可取置事 一父母ニ孝行兄弟与睦敷可仕候若親類と 不和にて異見をも不用不孝不儀之輩 有之者庄屋年寄五人組遂吟味可申出事 一惣而家業を専ニ可相働、百姓ニ不似合遊 芸を好或者悪心ヲ以公事好いたし
5枚目(全35枚の内)
非公事を進メ偽(いつわり)を巧人之害をなす 輩あらハ不隠置可申出不依(よらず)何事(なにごと)誓紙 を書一味同心いたし徒党ケ間敷義 仕間敷事 一諸作第一能(よく)種を撰候而蒔付耕作可入 念、荒作之様ニ致候者有之者急度可 令詮儀独身之百姓長煩又者幼少ニ而親 に離耕作難成もの有之ハ庄屋年寄 立会村中ニ而助合田畑不荒様可仕事 附地所不相応田畑諸作地ニ替劣(ヲトロエ)耕作不 精者有之者吟味仕異見を加其上 得心不致候ハバ可申出事
6枚目(全35枚の内)
一常々耕作并商売等茂不致家職之稼 無之者村中ニ有之者遂吟味其旨可 訴出事 一田畑家屋敷山林等永代売買御停止ニ候 若質物ニ差入候者拾ケ年を限證文に 庄屋年寄五人組加判為致田畑を質 物ニ入金銀を借候者年季之内地所金 主作いたし御年貢も同人より可相納事 一衣類諸道具又者門橋等之はつし 金物類出所不知物一切買取間敷候右 之品々質ニ取又者不可預り置、惣而 出所知さるものハ勿論出所知候ものニ而も
7枚目(全35枚の内)
請相人無之候ハバ質物ニも取間敷事 一庄屋者正直を専ニして私欲を不仕慈悲 之心有之普(アマネ)く小百姓に心を付身上不成 者致介抱不依何事村中公事出入 有之時者庄屋年寄立会双方之趣意 を承届親類縁者知音好嫌不撰 理非を能々致分別毛頭依怙贔屓 なく取扱可相済、勿論滞(とどこおり)儀有之者 可訴出事 附荷坦之者有之ハ可為曲事、若庄屋年 寄 無念有之者吟味之上急度可申付事 一盗賊(とうそく)悪党人有之者訴人可仕、尤執(しつ)を
8枚目(全35枚の内)
なさゝる様可申付事 一百姓衣類之儀庄屋ハ妻子共絹紬木綿 可着之、平百姓者布木綿之外不可着 綸子沙綾縮緬之類襟帯共致間敷 候然共身上宜者役所へ断立差図請 絹紬可着事 附男女とも乗物ニ不可乗、惣而家作目立候 普請奢ケ間敷義仕間敷事 一聟取嫁取養子之祝儀奢ケ間敷無之 様分限より軽く可仕、大勢人集不可大酒 所々より蚊屋之祝新宅之弘初産之祝 不相応之儀有之由可為停止候惣而分限
9枚目(全35枚の内)
に応し内證ニ而軽祝可仕候并葬礼之 野酒一切停止之事 一捨子堅不可仕、若他所之者捨置候ハバ村中 にて致養育早速可注進事 一猟師之外為遊興鳥獄((獣))不可取、雖為親類(猟師) 鶴白鳥取候儀御停止ニ候若村中ニ而鶴白 鳥売買いたし候ものあらハ可訴出事 一牛馬売買之儀出所聞届請人を取五人 組江相断可売買、不慥成さる牛馬不可買取候 且又村内穢(え)多有之分落牛請取候ハバ 牛主并其村庄屋年寄より證文取候上 其旨庄屋より度々役所江可令注進事
10枚目(全35枚の内)
一新規之寺社建立之儀堅停止ニ候惣而小社(ホコラ) 念仏題目之石塔供養塚庚申塚石地蔵類田畑山林等又者道路端ニ猥ニ建間敷候仏事 祭礼等軽執(し)行新規之祭礼不可取立事 一寺社之儀住持社人替り候ハバ可注進事 附寺社之儀修覆いたし候ハバ役所へ相 断可請差図事 一神佛開扉(かいひ)候ハバ可注進、当村之神仏 他国江当分遷置(うつしおき)開帳仕候義有之者 前方ニ可注進候惣而従地所新規之神 輿(コシ)送り来候様成義有之者不可請取 村中ニ少ニ而も差置申間敷事 一当村ニ有之出家社人山伏行人道心者
11枚目(全35枚の内)
店借地借之者并非人等其外穢多之 類迠常々致吟味候而胡(ウ)乱成者住居為 致間敷候庄屋年寄へ不相伺候而他所より 来候もの一夜之宿茂不仕様村中大小 之百姓水呑等ニ至迠常々堅可申付事 一村内之者或者立退或者逐電(ちくてん)或者 身上潰候而住居難成者有之ハ可注進 又者他村を子細有之立退来候もの 雖為親類当村ニ一切不可置事 一他所之者当村ニ致住居度旨願出候者其 者之出所家職之様子聞届出所へ断慥成 請人手形取之宗旨相改役所江遂注進
12枚目(全35枚の内)
可請差図店借地借等之者置候ハバ右同断 可心得事 一田畑配分之儀高拾石地面壱町歩右定より 少く田畑持候百姓者子供を始親類之内田畑 配分不相成候厄介有之者在所ニ而耕地 働為致或者相応之奉公人ニ可差出事 附跡式之儀存生之内庄屋年寄并親類立 会書付置後日ニ出入無之様可心得、跡 式 譲證文庄屋年寄近キ親類加判為致并ニ 跡目無之者不慮ニ死失候ハバ所持之品々 庄屋年寄其者之親類立会相改可訴出 事 一田畑屋敷山林境論無之様常々庄屋吟味
13枚目(全35枚の内)
可仕置事 一前方帳面ニ付有来酒屋之外斯(新)規(規)之酒造 不仕事 一当村之内能(のう)操(あやつり)勧進相撲又者狂(きふゝ)言 芝居」其外見世物一切為致申間敷候私 領ニ而も 分郷ニ而茂隣村之境目紛敷地所にて 致候ハバ芝居不始以前ニ可注進事 一惣而遊女野郎之類一切不可致(差置候)一夜之宿も 致間敷事 一行衛不知もの一夜之宿も不可借候旅人其 外何者ニ而も堂宮山林道路ニ死人有之ハ 其者之持来候雑物等改、庄屋年寄
14枚目(全35枚の内)
立会様子委細書付候而可注進、若 堂宮山林に隠忍ひ胡乱成者あらは 令詮儀品ニ寄搦捕可訴之、其外手負 又者不審(しん)成者他所より来候ハバ出所 尋(たつね)置附届致シ役所江注進之上差図を 請候而彼(かな(の))者相渡可遣(やる)事 一往来之輩若煩候ハバ早速医者ニ見世 随分致養生能々いたわり食物等入 念あたへ看病仕置可注進候歩行 不叶先江参候儀難成候ハバ其者之 在所承届迎を呼手形取相渡可申候 若病死致候ハバ其者之道具等、庄
15枚目(全35枚の内)
屋立会候而封印致置可請差図事 一殺害(セ カヒ)人或者自害致候ものあるひ盤(わ) 倒(たをれ)もの有之者番人付置早速注進 可仕候、火事盗人喧(口偏ニ花)口論 手負之者 惣而不慮(りょ)成義出来候ハバ右同様ニ無油断 可注進事 一馳(ハセリ)込者之節追手之者慕(シタイ水)ひ来其届 有之者早速村中馳(ハセ)集随分取逃不申様 致置可注進事 一村中ニ而喧(口偏ニ花)口論有可者庄屋年 寄出会 可裁判、他村ニ而喧(口偏ニ花) 口論有之節者不馳集 人を殺立退候もの有之者隣郷之者迠出会
16枚目(全35枚の内)
搦捕可注進、捕候儀難成候ハバ跡をしたひ 落着所へ急度可申届事 一田畑荒シ不可置、永荒場起返し切添又ハ新 地之田畑有之者早速可申出、隠置脇より訴出候ハバ 庄屋年寄可為落度事 附田畑を費取食之助ニ不成物一切作間敷事 一堀埋(ウツメ)出し又者道を挟((狭))、秣(まぐさ)場林際(きわ)を切添 田畑を不可仕前々より無道(みちなき)所へ道を付替 新堀不致候而不叶所者可差図請事 一用水掛引(かけひき)先規之例を以常々申合渇(ヂョク)水之 節争論無之様可仕候、水論境論等之場江 刀脇指槍長刀等持出候而致荷担者有之者
17枚目(全35枚の内)
其科本人より可重事 一武家諸士ニ対し慮外仕間敷事 一御伝馬宿江定助郷、右助郷より人馬寄(集)候ハバ問屋 年寄致吟味、猥ニ人馬触間敷候其宿之馬を 囲置面々之勝手能荷物付候様成儀一切 不可仕、御朱印者勿論駄賃伝馬人足之 外常々吟味いたし置風雨を不厭(いとハ)人 馬無滞様可仕候若囚人(めしうと)通り候ハバ無油断 人馬出、大切ニ可仕事 附助郷江人馬触来候ハバ刻限を不違可出之 若人馬割難心得候とも先無滞出、後日ニ可訴事 一渡舟有之村方者定之通舟賃取、往還
18枚目(全35枚の内)
之輩昼夜無滞可渡之、縦雖為大水之時 定之外舟賃多取申間敷事 附り往来之旅人ニ対シ無作法成儀仕間敷事 一御用之人馬者不及申本海道((街道))には無之候共 往来之もの駄賃人馬之儀不限昼夜無滞 可差出事 一御朱印又者御證文茂無之人馬を 出候様与申、或者駄賃を不出通り候もの 有之者其品ニ寄、押置庄屋年寄立会 詮儀之上怪(アヤ)敷躰有之者可注進事 一御朱印寺社領田畑屋敷賃物ニ取申間敷事
19枚目(全35枚の内)
一新田畑之儀右田畑秣場等之障(サワリ)ニ不成場所 者格別、右之障有之場所者開発仕間 敷事 一御公儀御為ニ成事者少分之儀ニ而 も無遠慮可申出、且又跡々申渡候儀 茂時節ニより百姓迷惑之儀有之者 其訳申出可請下知事 一在々町場共有来家数之外田畑潰(ツブシ)シ 又者野山空地たりといふとも猥ニ建廣 間敷事 一村中寄合番屋作番人付置家別之銘々 火消(けシ)道具拵置火之用心随分入念
20枚目(全35枚の内)
風烈(ハケ)敷時者不限昼夜町並者町中 在方者村中庄屋年寄相廻自身番 を仕、出火無之様可仕候若出火有之者 鳴を立村中之者共馳集情((精))を出シ火を 可消、勿論御年貢米入置候郷蔵大切ニ 囲可申事 附毎度灰小屋より出火候間灰屋江灰を入候時 分水にてしめし入念小屋へ入可申事 一堤(つつみ)川除不切様常々心懸満水之時者村中 之者出会随分可囲之、大造(ぞをう)成道橋等 損候而往還(クワン)之障(サワリ)ニ成候欤又者大分之 田地損亡ニ可成所者惣而小破之節修復
21枚目(全35枚の内)
すべく及大破実々自普請難成 所者御入用ニ而可申付、請取場之道橋者 常々無油断作事可申付事 一村順之廻文不限昼夜先々江相届手形 取置可申事 一樋(トイ)戸前道具并鉄物川除枠(シのら)枕之類盗取 候族有之候間常々心懸見廻不盗取候 様可仕事 一満水之時堤川除囲候節又者盗人狼藉(ロウゼキ) もの并火事有之鳴を立候節村々之 者拾四五歳以上六拾歳以下之男ハ不残 可出、若不出合者有之者庄屋年寄
22枚目(全35枚の内)
可詮儀事 一鉄炮之儀猟師筒威筒鉄炮渡之外 村中不可隠置、若隠置者有之由訴人有之 者当人者不及申庄屋年寄五人組迠可為曲事 一御林御立山之儀竹木者勿論枝葉(し よう)下草 等迠公用之外伐(こり)採間敷候縦百姓持林 并屋敷四壁(へき)之木ニ而茂目立候木者不可 伐、採遣候ハバ書付差出得差図可伐之、尤 伐採候ハバ苗木可植置事 附堤囲ニ植置候竹木猥ニ伐採間敷事 一入会之野山之面々持山ニ而も草木之根堀取 間舗候鶴之嘴を入候儀可為停止、田畑山崩
23枚目(全35枚の内)
石砂入等無之様山林に苗木を植立可申 勿論山崩之所者土砂留致置可申事 附山中ニ而焼畑致来候所者格別野ニ火を付候 茂可為停止、兼々童(わらし)下々迠此旨堅可申付 置、若野ニ火を入候ハバ早速村中駆付火消 可申事 一博奕(ばくえき)惣而懸之諸勝負或者万人講と 号、あるひは商ニ殊寄博奕ニ似たる義 何にても一切不可仕、若違背之輩有之 歟亦者右之宿等致候ものあらハ可訴出事 一百姓ニ不似合風俗長脇差を帯シ喧(口偏ニ花) 口論を好あるひハ大酒飲(のみ)致酔(すい)狂行跡
24枚目(全35枚の内)
悪敷もの有之ハ可訴出事 一惣而御代官所江百姓公事訴訟等不依 何事江戸江出候儀役所江不相伺候而 江戸江出候百姓共之儀者道中往来江戸 逗留之宿払等諸入用不残右罷出候 者江自分入用ニ申付候間村中懸り之 割合一切為致申間敷候右之旨違背之族 有之者可為曲事 一他所江参一夜泊り罷出候程之儀者庄屋へ 断罷出、若他国へ奉公ニ出候歟又者用事 候而罷出候者其子細庄屋年寄江五人組 より書付を以可相断、公事訴訟ニ而
25枚目(全35枚の内)
公儀へ出候とも其趣庄屋年寄五人組江可届 庄屋年寄者右之旨早速可注進事 附所生之ものたりとも他所ニ年久敷罷在 立帰り候もの有之者其断可申出事 一諸職賃銀并ニ商物無故(ゆえなく)俄ニ高直ニ売出シ 過分之利徳を貪(ムサホル)間敷事 一御年貢銀并小物成銀等納日限相触候ハバ 無滞早速役所江可致持参候若及遅滞 候ものハ吟味之上急度過怠[1]可申付事 附御年貢相触候度々銀請取通可遣候間 皆済之節村々勘定目録差出引替可申事 一御年貢米納所之儀庄屋年寄立会青
26枚目(全35枚の内)
米砕(くたけ)米籾糠(ぬか)等無之様随分吟味いたし 升目不切様俵入可入念事 一俵拵之儀二重菰小口かゝり俵印摺(すり)縄ニ而堅メ 立縄横縄三所もしり[2]目縄結船積之 節壱俵宛菰ニ而三ケ所縄結いたし 俵不損様可致、中札外札認様役所江 達可請差図、我等御代官所何国何郡 何村米何斗入年号月日書付庄屋 年寄米主升取米見之名書記連判 いたし俵毎ニ可入之、外札者竹ニ而何年 御納米我等御代官所何国何郡何村 米主誰と可書記、札裏(うら)ニ俵貫目可
27枚目(全35枚の内)
記事 一御城米何方之御蔵納ニ成候共船上乗 慥成者村中致吟味可遣之、尤他所之者 に為請負(をわせ)渡切ニ仕間敷候御蔵前にて 欠米其外損米等有之者郷(滞)として 不足之分急度相払可申候且又御蔵 前入用并船中雑用等多く不入様申付 委細帳面ニ記入用可渡事 附納庄屋江戸京大坂逗留中物入多無之 様可 吟味事 一御年貢金銀庄屋方へ取集候ハバ控帳いたし 納候度々庄屋方より米銀請取手形通帳ニ
28枚目(全35枚の内)
いたし度々控帳ニ押切[3]致、印形可遣之 其上其年之御年貢割之通銘々 百姓より皆済ニ者惣百姓より御年貢割之 儀ニ付少シ茂申分無之旨御年貢割帳面 奥ニ惣連判取置候而後日出入無之様 可仕候若御年貢割方之儀不埒之仕置 惣百姓之連判茂取置不申及出入候ハバ庄屋年寄急度曲事可申付事 一御年貢米納所之節庄屋方より米主 手形遣(やり)之庭帳[4]ニ入念書付印形 可致、手形無之及出入後日ニ訴之候とも 取上間敷事
29枚目(全35枚の内)
附郷蔵雨漏(むり)不申様入念修復可仕、尤御米 納候ハバ昼夜番人附置無油断大切ニ相守 庄屋年寄見廻り可申候若火難水難盗人ニ 逢(あい)候ハバ早速村中弁米可致、御米濡(ぬれ)候歟 あるひは下敷薄くして御米損、鼠喰来 俵有之御蔵詰之節撰(えらひ)出候俵不足米ニ成候 ハバ村中弁米申付候上庄屋年寄可為越度事 一惣而従 公儀被下候人足扶持等当座に 割いたし帳面ニ請取候趣為書付印形 可取置惣而継合勘定不可致事 一毎年御年貢免定[5]出候ハバ村中之もの 為致披見、庄屋年寄方より村中大小之 百姓出作[6]之者江も不残相触寄合候て
30枚目(全35枚の内)
免割いたし小物成[7]口米[8]浮役[9]臨時(りんじ)物とも 可納米銀壱人宛委細書付小百姓も疑敷(ウタガワ) 不存様其訳為申聞右書付為写其上 免定奥別紙継候而立会披見仕候旨 書付銘々印形可取置、郷落戸ニも 免定之写可張置、御年貢割仕候節 村中夫銭[10]小入用[11]御年貢と入交(まぜり)一同不可 致差別を立、可割之、算用違無之様 随分可入念、御年貢之儀者不及申 外物とも申渡候通相納候様常々村中 可申合事 一公用之儀者村中申合候ニ付庄屋
31枚目(全35枚の内)
方へ百姓寄合之節村入用ニ懸り候酒肴 等一切給(たべ)申間敷事 一堤川除御普請用水堀浚(サラエ)仕候節庄屋年 寄者勿論人足等迠酒肴給(たべ)其代村入用 に懸ケ申間敷事 一我等家来手代并妻子召仕等ニ至迠金銀 米銭衣類諸道具酒肴其外軽キ物 成共音信禮物一切仕間敷候右之外貸物 借物等あるひハ押売押買不依何事 不作法之儀致候もの有躰ニ其趣可申出 隠置後日ニ相聞候ハバ庄屋年寄可 為越度事
32枚目(全35枚の内)
一我等家来并手代召仕之者当村江参口上 上(ハネ)ニ而申儀者不及申我等并手代之印形 無之書付持参候而何事を申付候とも 一切承引不可仕、早速可注進事 一家来(我等)并手代村々江相廻り候節ハ何時 ニ而も昼食は為持候飯米味噌野菜ハ 其所ニ而相場直段ニ調候間当座ニ代 物可請取之、泊り休之所ニ而御定之木銭 出之、上下共百姓之馳走ニ不相成、村々 費無之様急度申付候条酒肴等此 方より差図無之物何ニ而も調置申 間敷候若調置不用之者寄合飲
33枚目(全35枚の内)
食村中入用ニ割懸候ハバ庄屋年寄可為 曲事、無差図人馬集置百姓之隙を費 申間敷事 一村中年中之夫銭懸り物小入用等之儀 随分庄屋年寄遂吟味入用多無之様 可入念候惣而村中入用少ニ而茂不残当座ニ 委細帳面ニ記立会候而印形可仕候 此外別帳面ニ作り置間敷候右帳面之外 庄屋年寄より懸り物割懸候ハバ可為曲事 毎年翌正月中前年之村入用帳写候而 本書相添可差出、遂一覧、帳面写置 本帳者庄屋へ可相返候間年々之帳
34枚目(全35枚の内)
紛失無之様大切ニ可致置事 一五人組宗門帳ニ押候外別印形拵置 申間敷候若子細候而印形替候ハバ 庄屋年寄者役所江可相届、小百姓者 庄屋年寄へ可断、名を改候ハバ 早速相断五人組帳ニも改候名を可記事 一百姓帯刀堅停止之事 附百姓子供を始親類之内他所へ奉公ニ 出候者後日在所へ帰候而刀差申間敷候 縦先前より合刀扶持を請候共刀不可 差、庄屋年寄見免(ユルシ)置候ハバ可為曲事 右之條々常々堅相守此旨違背之
35枚目(全35枚の内)
輩有之者可為曲事、此帳毎年正月 五月九月十一月壱ケ年ニ四度宛村中 大小之百姓寄合慥ニ読聞常々此趣 可令合点(がてん)もの也 大森 御役所 前書之御ケ條逸(いち)々奉拝見村中大小之 百姓五人組壱人茂漏候者無御座候御ケ條書 則庄屋方ニ写置被仰渡候趣為読聞 一ケ條宛合点いたし急度相守可申候 若此旨相背候者如何様之曲事にも 可被仰付候為其連判仕差上申候 以上
脚註
- ↑ (かたい)あやまち、てぬかり、 過失の償いに対する物事、江戸時代、過失、罪科があった者に金品を収めさせ、また労役に服される罪
- ↑ 綟り織(もじりおり)絡み織に同じ、一本の縦糸が一~二本のたて糸にからみながら横糸と組み合わせ、透き間のある織物、羅、絽、紗などの類
- ↑ (おしきり)割り印のこと
- ↑ (にわちょう)年貢を納入する時現場でその出納を記載した帳簿
- ↑ (めんじょう)石盛の数量の中から免じて取る意、田祖課賦の割合、免幾つと呼び、免一つは石高一石に対する年貢一斗の祖率、税率が決まること
- ↑ (でさく)他村にある田畑に出向いて耕作するもの、入作(いりさく)他村のものが自村内にある田畑に出向いて耕作すること
- ↑ (こものなり)田畑、屋敷地以外の土地、山野、河川などからの収穫物や商売などの収入に賦課される銀納貢租、田畑屋敷地に懸るのは本途物成(ほんとものなり)という、山年貢、野年貢、山役、漆年貢、鳥年貢、池魚年貢など
- ↑ (くちまい)鎌倉期から近代にかけて徴収された付加税の一つ、口永(くちえい)ともいう、米納の本祖である年貢米のほかに加徴された税で、年貢の減損などを補うための税、年貢米一表あたり一升の口米をとるとされた、これ等は代官所の経費にあてられ、下役人の給料、紙、筆、墨代などにされた、口米は銀納、口永は金納、口銭
- ↑ (うきやく)運上、冥加ともいう、小物成の中で年貢額が変動するものとか、臨時の課税や年限を限って賦課するものもいう
- ↑ (ぶせん・ぶぜに)夫役(労役、助郷など)のかわりに出す銭
- ↑ (むらにゅうよう)村落経営のための費用
コメント
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== 渡辺 光史 のコメント ...
四枚目も読みたいのですが、UPいただけませんか。 最終ページの1行目が脱落しているので修正してください。
--渡辺 光史 2011年8月15日 (月) 08:38 (JST)