「菩提寺旦那の取り決め」の版間の差分

提供:石見銀山領33ヵ寺巡り
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目録番号:ま1-2
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目録番号:の22
  
 
担当:島根大学法文学部社会文化学科歴史と考古コース古文書ゼミ
 
担当:島根大学法文学部社会文化学科歴史と考古コース古文書ゼミ
  
担当:古文書に親しむ会 in 桜江
 
  
担当:古文書に親しむ会 in 松江
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== 文書画像と釈文、書き下し文 ==
  
 +
=== 1枚目(全5枚の内) ===
  
== 文書画像と釈文 ==
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[[ファイル:の2201.JPG|600px]]
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天明三卯年九月
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  被仰渡候趣御請書
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         石見国邑知郡
 +
              浜原村
  
=== 1枚目(全2枚の内) ===
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=== 2枚目(全5枚の内) ===
  
[[ファイル:2-1-1.JPG|600px]]
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[[ファイル:の2202.JPG|600px]]
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   覚
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一他所ゟ嫁参候節夫菩提寺之旦那ニ不相成実方
 +
 菩提寺之旦那ニ成居相果候後家内之内ゟ其跡ヲ
 +
 続実方菩提寺之旦那ニ相成候儀有之候得共以来ハ
 +
 何方ゟ嫁来候共女房ハ夫之菩提寺旦那たるへき事
 +
一子供何人有之候共親ニ同居之内ハ其親之菩提寺
 +
 可為旦那事
 +
一子供之内分地致候共親同寺之旦那可為事
 +
    但由緒有之他旦ニ相成度節親之旦那寺
  
     借用申銀子事
 
  丁銀弐拾五貫目也  但 申三月元日十二月切利ノ分壱割半ニシテ
 
右者二之丸御蔵入米我等共江被 仰付候處
 
才覚不相成貴殿へ御頼申入候得者前書之銀御貸
 
被下、慥借用仕、米上納仕候所、実正也、然上者三月より
 
十二月迄壱割半之加利にて元利無不足返済可仕候
 
万一本人不埒仕候ハバ請人より日限ニ急度埒明可申候
 
返弁方之儀被入御念候ニ付、此月当神門郡ニ而弐拾
 
四ケ村より別紙證文相渡候通少無相違返弁可仕候
 
ケ様相定候上者仮令如何様之不慮新規
 
御国法出来候共、毛頭相違申間敷候条後日
 
請人并御役所御奥書取之相渡申所
 
            仍如件
 
             雲州神門郡大津借主
 
                  山田 又左衛門  印
 
  宝暦十四申十一月   同所  同断
 
                  森廣 幾太    印 
 
             同郡  知井宮
 
                  山本 仁兵衛   印
 
             同郡  杵築請人
 
                  藤間 久左衛門  印
 
             松江請人
 
                  森脇 甚右衛門  印
 
  
=== 2枚目(全2枚の内) ===
+
    覚
 +
一他所より嫁ぎ参り候節、夫菩提寺の旦那に相成らず、実方
 +
 菩提寺の旦那に成居り相果てそうろう後、家内の内よりその跡を
 +
 続ぎ、実方菩提寺の旦那に相成りそうろう儀これ有りそうらえども、以来は
 +
 何方より嫁ぎ来りそうらえども、女房は夫の菩提寺旦那たるべき事
 +
一子供何人これ有りそうらえども、親に同居の内はその親の菩提寺
 +
 旦那たるべき事
 +
一子供の内分地致しそうろうとも親同寺の旦那たるべき事
 +
    但し、由緒これ有り他旦にあい成りたき節、親の旦那寺
  
[[ファイル:2-1-2.JPG|600px]]
+
=== 3枚目(全5枚の内) ===
  
        石州銀山御領
+
[[ファイル:の2203.JPG|600px]]
            西田屋喜六 殿
+
故障も無之其外一同於得心者双方ゟ役所へ相
            角屋庄十郎 殿
+
      届他旦ニ可成事
  前書之通承届御返弁之儀相違無之様
+
   一家内之内々別株之百性懸り居家主と同寺旦那
  急度可申付候御奥書如件
+
    無之候共改宗ハ難成懸り居候もの代々宗旨旦那可為事
               雲州勝手方役
+
   一壱季半季ニ差置候下男下女ハ其者銘々之宗旨
                   和田 理八
+
    旦那たるべき事
                   岡本 彦助
+
      但譜代もの抔子孫断絶致候ハヽ旦縁跡継之儀者
                   田中 幸平
+
      主人勝手次第可為事
                   後藤 久兵衛
+
  一親類縁者之内田畑譲請候歟又ハ聟養子娵等を
                   荒井 助市
+
   貰候節田畑附遣候由緒を以妻子之内ゟ親元并
               同奉行
+
   田畑譲請候者之菩提寺旦那ニ成居其者相果候共
                  磯崎 丈太夫
+
   養子ハ養父之菩提寺旦那女房ハ夫之菩提寺
                  湯川 冶兵衛
+
   之旦那ニ可成筋ニ付其者一代限ニ而旦縁跡継者
                  山本 覚兵衛
+
   不立事
              西田屋 喜六 殿
+
    附女房実親之菩提寺旦那ニ付其由緒を以子供之内
              角屋  庄十郎殿
+
    旦縁跡継ニ立置候分有之者聟養子娵等参候得者
 +
    縁付候者方菩提寺旦那ニ相成事ニ候間跡継ハ
 +
    是又不立事
 +
  一聟養子娵等年数相立離縁致候共銘々親元
  
  
== 書き下し文 ==
 
  
  借用申す銀子のこと
+
   一子供の内分地致しそうろうとも親同寺の旦那たるべき事
 +
    但し、由緒これ有り他旦にあい成りたき節、親の旦那寺
 +
    故障もこれ無く其の外一同得心に於いては双方より役所へあい
 +
    届け他旦に成るべき事
 +
 一家内の内々別株の百姓懸り居る家主と同寺の旦那
 +
  これ無くそうろうとも、改宗は成り難し、懸り居りそうろうもの代々宗旨旦那たるべき事
 +
 一壱季半季に差し置きそうろう下男下女は其の者銘々の宗旨
 +
  旦那たるべき事
 +
    但し、譜代ものなど子孫断絶致しそうらはば旦縁跡継の儀は
 +
    主人勝手の次第たるべき事
 +
一親類縁者の内田畑譲り請けそうろうか、又は聟養子娵などを
 +
 貰いそうろう節、田畑附け遣わしそうろう由緒を以て妻子の内より親元ならびに
 +
 田畑譲り請けそうろう者の菩提寺旦那に成り居り、その者あい果てそうろう共
 +
 養子は養父の菩提寺旦那、女房は夫の菩提寺
 +
 の旦那に成るべき筋に付き、その者一代限りにて旦縁跡継ぎは
 +
    附けたり、女房実親の菩提寺旦那に付き、其の由緒を以て子供の内
 +
  旦縁跡継ぎに立て置きそうろう分之有らば、聟養子娵等参りそうらえば、
 +
  縁付きそうろう者方菩提寺旦那にあい成る事にそうろう間、跡継ぎは
 +
  是また立てざる事
 +
一聟養子娵等年数あい立ち、離縁致しそうろうとも、銘々親元
 +
 
 +
=== 4枚目(全5枚の内) ===
 +
 
 +
[[ファイル:の2204.JPG|600px]]
 +
之菩提寺旦那可為事
 +
一祈願ニ而他之旦那成候儀祈願斗ハ勝手次第ニ候得共
 +
 菩提所共ニ祈願寺旦那ニハ不相成事
 
   
 
   
   丁銀二拾五貫目なり   但し申三月元日十二月切
+
  右女ハ夫用紙養父之宗旨菩提寺旦那ニ相成
                 利ノ分一割半ニシテ
+
  縁付候方之寺院宗判可致所実方菩提寺
 +
旦那ニ成居其者相果候後旦那跡継等致右ニ付而ハ
 +
彼是差支を申立宗門帳遅滞之村方も有之候
 +
畢竟寺旦共筋合も不弁故右体致混雑
 +
儀相聞候間是迄之趣此度相伺候処寺社奉行中
 +
ニも御ん評儀之上公事方御勘定奉行衆御指図ニ付
 +
改申渡条寺旦共其旨存前書ケ條之趣逸々無
 +
忘脚堅ク可相守者也
 
   
 
   
  右は二の丸お蔵入り米我ら共へ、仰せつけられ候ところ
+
  天明三卯年九月 川平右衛門
才覚相ならず。貴殿へ御頼み申し入れ候へば、前書の銀御貸し
+
 
下され、たしかに借用つかまつり、米上納仕り候所、実正なり、しかる上は三月より
+
  前書之通リ被仰渡承知奉畏以来御ケ條之堅ク
十二月まで一割半の加利にて元利不足なく返済仕るべく候
+
  相守可申候依御請印形差上ヶ申候己上
万一本人不埒仕り候はば、請け人より日限にきっとらち明け申すべく候
+
    卯九月      石見国邑知郡
返弁方の儀ご念を入れられ候につき、この月当神門郡にて二十
+
             浜原 寺院
四ヵ村より別紙証文相渡し候とおり少しも相違なく返弁仕るべく候
+
 
かようあい定め候上はたとえいかようの不慮新規
 
御国法しゅったい候とも、もうとう相違申すまじく候条後日
 
  請け人ならびにお役所御奥書きこれを取り相渡し申すところ
 
  よって件のごとし
 
   
 
  前書きのとおり承り届けお返弁の儀 相違これ無きよう
 
きっと申しつくべく候御奥書き件のごとし
 
  
 +
の菩提寺旦那たるべき事
 +
一祈願に而他の旦那成りそうろう儀、祈願ばかりは勝手次第にそうらえども、
 +
 菩提所共に祈願寺旦那にはあい成らざる事
 
   
 
   
== 現代語訳 ==
+
前書の通り仰せ渡され承知畏み奉り以来御ケ条の趣き堅く
 +
あい守るべく申しそうろう依り御請け印形差上げ申し候以上
 +
  卯九月     石見国邑知郡 
 +
          浜原  寺院
  
松江城ニの丸のお蔵入り米を私どもに仰せつけられたけれども
+
=== 5枚目(全5枚の内) ===
算段がつきませんので、あなた様へ御頼みいたしましたところ、前書きの銀子をお貸し
 
くださることにことになり、たしかに受け取りました。
 
お借りしたうえは、3月から12月まで1割半の利息で元利ともに不足なく返済いたします。
 
万一私ども借主がお返しできなかった時には、請け人が日限迄にきっとお返し致します。
 
間違えなくお返しいたします。返済について御念を入れられたので、宝暦14年11月、神門郡にて
 
24ヵ村より別紙証文をお渡しした通り、少しも相違無くお返し致します。
 
このように決めたうえは、いかなる別の新しい法律ができたとしても、間違えなくお返し致します。以上の通り、後日、
 
請け人及びお役所の奥書きを取りお渡ししました。
 
宝暦14年申4月(明和元年・1764年)<ref>脚註のダミーです。</ref>
 
  
ニの丸お蔵入り米を才覚できず、丁銀25貫目の借用申し込みをする。
+
[[ファイル:の2205.JPG|600px]]
これによって米を上納した
+
前書之通リ被仰渡承知奉畏惣百姓へも不洩様
3月~12月まで一割半の利で返済を約束する
+
申聞以来ハ御ケ條之趣堅ク相守可申候依之御請連印
 +
差上ヶ申候以上
 +
  卯九月      石見国何村
 +
                庄屋
 +
                頭百姓
 +
                百姓代
  
■借主 雲州神門郡大津の山田又右衛門、森廣幾太
+
前書の通り仰せ渡され承知畏み奉り惣百姓へも洩らさざる様
 +
申し聞き以来は御ケ条の趣き堅くあい守るべく申しそうろう之依り御請け連印
 +
差上げ申しそうろう以上
 +
  卯九月     石見国何村
 +
               庄屋   
 +
               頭百姓
 +
               百姓代
  
■保証人 雲州郡知伊宮の山本仁兵衛、杵築の藤間久左衛門、松江の森脇甚右衛門
+
== 現代語訳 ==
 
+
一よその所から嫁に来た折、夫の菩提寺の旦那に成らず、実家の菩提寺の旦那のままでいて、
■貸主 西田屋幾六、角屋庄十郎
+
その人が亡くなった時、その家の中から跡を継いで実家の菩提寺の旦那にしておくという事 があるけれども、
 
+
この後は、どこから嫁に来ても、女房は夫の菩提寺の旦那とするべき事。
■松江藩勝手方役人、奉行が連著保証の奥書きをしている
+
一子どもが何人あろうとも、親と同居のうちは、その親の菩提寺の旦那とするべき事。
  
    勝手方役人 和田理八、岡本彦助、田中幸平、後藤九兵衛、荒井助市
+
 一、子供が分家をしても親と同じ寺の旦那であること
 +
    但し事情があって他の旦那になりたい場合は、親の旦那寺が異議を唱えずその他一同も承認すれば双方の旦那寺から役所へ届けて他の寺の旦那になること
 +
 一、同じ家に住んでいる別株の家族は、頼って住ませてもらっている家の主人と同寺の旦那でなくても、改宗してはならず代々の宗旨の旦那であること
 +
 一、一年や半年の奉公人として住んでいる下男下女は各自の宗旨の旦那であること
 +
    但し譜代奉公人など子孫が断絶している者の旦縁の跡継ぎについては主人が決めること
 +
一親類縁者から田畑を譲り請けたか、または、聟養子や嫁などをもらった際に田畑附きであった場合に、
 +
妻子のうちから、その親元か、または田畑を譲ってもらった者の菩提寺旦那に成っている者がいる.
 +
もし、その者がなくなったとしても、養子は養父の菩提寺旦那、女房は夫の菩提寺旦那に成る事が原則なので、
 +
その者が実家の菩提寺旦那になる事が出来るのは一代限りなので、次の世代に旦那の跡を継がせてはならない。
  
    勝手方奉行 磯崎丈太夫、湯川治兵衛、山本覚兵衛
+
 加えて、女房が実家の菩提寺の旦那えあるため、そうした事情をうけつぎ、子供のうち
 +
   旦縁の跡継ぎになっている者がいる場合、婿養子や嫁などとしてでむいたならば、
 +
   縁付先の家の菩提寺の旦那になるべきであるので、跡継ぎは
 +
      また立てないこと
 +
一、婿養子や嫁などが年数が経って、離縁する事になっても、各自親元
 +
の菩提寺の旦那になること
 +
一 、祈願をするためにほかの寺の旦那がなることは、祈願だけであれば自由であるが、
 +
菩提所の方も祈願寺の旦那にはならないこと
  
 +
前書の通りにおっしゃられたように承知致してからは、御ケ条の趣旨を堅く重んじ、
 +
お互いに守るようにと申し上げたので御請け印形を差上げました以上。
 +
前書の通りにおっしゃられたように承知致し、
 +
惣百姓達へも洩らしていないないという様子をお聞きしてからは御ケ条を重んじ、
 +
お互いに守るようにと申し上げた上で御請け連印を差上げました以上。
  
 
== 脚註 ==
 
== 脚註 ==

2015年11月24日 (火) 06:03時点における最新版

目録番号:の22

担当:島根大学法文学部社会文化学科歴史と考古コース古文書ゼミ


文書画像と釈文、書き下し文[編集]

1枚目(全5枚の内)[編集]

の2201.JPG

天明三卯年九月
  被仰渡候趣御請書
         石見国邑知郡
              浜原村

2枚目(全5枚の内)[編集]

の2202.JPG

   覚
一他所ゟ嫁参候節夫菩提寺之旦那ニ不相成実方
 菩提寺之旦那ニ成居相果候後家内之内ゟ其跡ヲ
 続実方菩提寺之旦那ニ相成候儀有之候得共以来ハ
 何方ゟ嫁来候共女房ハ夫之菩提寺旦那たるへき事
一子供何人有之候共親ニ同居之内ハ其親之菩提寺
 可為旦那事
一子供之内分地致候共親同寺之旦那可為事
    但由緒有之他旦ニ相成度節親之旦那寺


    覚
一他所より嫁ぎ参り候節、夫菩提寺の旦那に相成らず、実方
 菩提寺の旦那に成居り相果てそうろう後、家内の内よりその跡を
 続ぎ、実方菩提寺の旦那に相成りそうろう儀これ有りそうらえども、以来は
 何方より嫁ぎ来りそうらえども、女房は夫の菩提寺旦那たるべき事
一子供何人これ有りそうらえども、親に同居の内はその親の菩提寺
 旦那たるべき事
一子供の内分地致しそうろうとも親同寺の旦那たるべき事
    但し、由緒これ有り他旦にあい成りたき節、親の旦那寺

3枚目(全5枚の内)[編集]

の2203.JPG

故障も無之其外一同於得心者双方ゟ役所へ相
    届他旦ニ可成事
 一家内之内々別株之百性懸り居家主と同寺旦那
  無之候共改宗ハ難成懸り居候もの代々宗旨旦那可為事
 一壱季半季ニ差置候下男下女ハ其者銘々之宗旨
  旦那たるべき事
    但譜代もの抔子孫断絶致候ハヽ旦縁跡継之儀者
    主人勝手次第可為事
一親類縁者之内田畑譲請候歟又ハ聟養子娵等を
 貰候節田畑附遣候由緒を以妻子之内ゟ親元并
 田畑譲請候者之菩提寺旦那ニ成居其者相果候共
 養子ハ養父之菩提寺旦那女房ハ夫之菩提寺
 之旦那ニ可成筋ニ付其者一代限ニ而旦縁跡継者
 不立事
   附女房実親之菩提寺旦那ニ付其由緒を以子供之内
  旦縁跡継ニ立置候分有之者聟養子娵等参候得者
  縁付候者方菩提寺旦那ニ相成事ニ候間跡継ハ
  是又不立事
一聟養子娵等年数相立離縁致候共銘々親元


 一子供の内分地致しそうろうとも親同寺の旦那たるべき事
    但し、由緒これ有り他旦にあい成りたき節、親の旦那寺
    故障もこれ無く其の外一同得心に於いては双方より役所へあい
    届け他旦に成るべき事
 一家内の内々別株の百姓懸り居る家主と同寺の旦那
  これ無くそうろうとも、改宗は成り難し、懸り居りそうろうもの代々宗旨旦那たるべき事
 一壱季半季に差し置きそうろう下男下女は其の者銘々の宗旨
  旦那たるべき事
    但し、譜代ものなど子孫断絶致しそうらはば旦縁跡継の儀は
    主人勝手の次第たるべき事
一親類縁者の内田畑譲り請けそうろうか、又は聟養子娵などを
 貰いそうろう節、田畑附け遣わしそうろう由緒を以て妻子の内より親元ならびに
 田畑譲り請けそうろう者の菩提寺旦那に成り居り、その者あい果てそうろう共
 養子は養父の菩提寺旦那、女房は夫の菩提寺
 の旦那に成るべき筋に付き、その者一代限りにて旦縁跡継ぎは
   附けたり、女房実親の菩提寺旦那に付き、其の由緒を以て子供の内
  旦縁跡継ぎに立て置きそうろう分之有らば、聟養子娵等参りそうらえば、
  縁付きそうろう者方菩提寺旦那にあい成る事にそうろう間、跡継ぎは
  是また立てざる事
一聟養子娵等年数あい立ち、離縁致しそうろうとも、銘々親元

4枚目(全5枚の内)[編集]

の2204.JPG

之菩提寺旦那可為事
一祈願ニ而他之旦那成候儀祈願斗ハ勝手次第ニ候得共
 菩提所共ニ祈願寺旦那ニハ不相成事

右女ハ夫用紙養父之宗旨菩提寺旦那ニ相成
縁付候方之寺院宗判可致所実方菩提寺
旦那ニ成居其者相果候後旦那跡継等致右ニ付而ハ
彼是差支を申立宗門帳遅滞之村方も有之候
畢竟寺旦共筋合も不弁故右体致混雑
儀相聞候間是迄之趣此度相伺候処寺社奉行中
ニも御ん評儀之上公事方御勘定奉行衆御指図ニ付
改申渡条寺旦共其旨存前書ケ條之趣逸々無
忘脚堅ク可相守者也

天明三卯年九月 川平右衛門
 
前書之通リ被仰渡承知奉畏以来御ケ條之堅ク
相守可申候依御請印形差上ヶ申候己上
  卯九月      石見国邑知郡
           浜原 寺院


の菩提寺旦那たるべき事
一祈願に而他の旦那成りそうろう儀、祈願ばかりは勝手次第にそうらえども、
 菩提所共に祈願寺旦那にはあい成らざる事

前書の通り仰せ渡され承知畏み奉り以来御ケ条の趣き堅く
あい守るべく申しそうろう依り御請け印形差上げ申し候以上
  卯九月     石見国邑知郡 
          浜原  寺院

5枚目(全5枚の内)[編集]

の2205.JPG

前書之通リ被仰渡承知奉畏惣百姓へも不洩様
申聞以来ハ御ケ條之趣堅ク相守可申候依之御請連印
差上ヶ申候以上
  卯九月      石見国何村
                庄屋
                頭百姓
                百姓代
前書の通り仰せ渡され承知畏み奉り惣百姓へも洩らさざる様
申し聞き以来は御ケ条の趣き堅くあい守るべく申しそうろう之依り御請け連印
差上げ申しそうろう以上
  卯九月     石見国何村
               庄屋   
               頭百姓
               百姓代

現代語訳[編集]

一よその所から嫁に来た折、夫の菩提寺の旦那に成らず、実家の菩提寺の旦那のままでいて、
その人が亡くなった時、その家の中から跡を継いで実家の菩提寺の旦那にしておくという事 があるけれども、
この後は、どこから嫁に来ても、女房は夫の菩提寺の旦那とするべき事。
一子どもが何人あろうとも、親と同居のうちは、その親の菩提寺の旦那とするべき事。
 一、子供が分家をしても親と同じ寺の旦那であること
    但し事情があって他の旦那になりたい場合は、親の旦那寺が異議を唱えずその他一同も承認すれば双方の旦那寺から役所へ届けて他の寺の旦那になること
 一、同じ家に住んでいる別株の家族は、頼って住ませてもらっている家の主人と同寺の旦那でなくても、改宗してはならず代々の宗旨の旦那であること
 一、一年や半年の奉公人として住んでいる下男下女は各自の宗旨の旦那であること
    但し譜代奉公人など子孫が断絶している者の旦縁の跡継ぎについては主人が決めること
一親類縁者から田畑を譲り請けたか、または、聟養子や嫁などをもらった際に田畑附きであった場合に、
妻子のうちから、その親元か、または田畑を譲ってもらった者の菩提寺旦那に成っている者がいる.
もし、その者がなくなったとしても、養子は養父の菩提寺旦那、女房は夫の菩提寺旦那に成る事が原則なので、
その者が実家の菩提寺旦那になる事が出来るのは一代限りなので、次の世代に旦那の跡を継がせてはならない。
 加えて、女房が実家の菩提寺の旦那えあるため、そうした事情をうけつぎ、子供のうち
   旦縁の跡継ぎになっている者がいる場合、婿養子や嫁などとしてでむいたならば、
   縁付先の家の菩提寺の旦那になるべきであるので、跡継ぎは
     また立てないこと
一、婿養子や嫁などが年数が経って、離縁する事になっても、各自親元
の菩提寺の旦那になること
一 、祈願をするためにほかの寺の旦那がなることは、祈願だけであれば自由であるが、
菩提所の方も祈願寺の旦那にはならないこと
前書の通りにおっしゃられたように承知致してからは、御ケ条の趣旨を堅く重んじ、
お互いに守るようにと申し上げたので御請け印形を差上げました以上。
前書の通りにおっしゃられたように承知致し、
惣百姓達へも洩らしていないないという様子をお聞きしてからは御ケ条を重んじ、
お互いに守るようにと申し上げた上で御請け連印を差上げました以上。

脚註[編集]


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<comments hideform="false" /> トーク:菩提寺旦那の取り決め